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令状の効力の及ぶ範囲と必要な処分
[1] 令状の効力の及ぶ範囲
 捜索・差押えの対象は、令状に記載されている場所、物、身体に限られ、記載されていない箇所については、行うことはできない。
 捜索の範囲は、令状に記載された場所そのものだけでなく、その場所内にある物及び人(その人が当該場所に通常いる人か、たまたまそこに居合わせた人かを問わない。)、その着衣、携帯品にもその効力が及ぶ。
 しかし、被疑者以外の第三者の身体・物(着衣を含む。)、については、押収すべき物の存在を認めるに足りる客観的状況のある場合に限り捜索することができる。
[2] 必要な処分
 捜査機関は刑事訴訟法222条1項、111条において、捜索状・差押状の執行について、錠をはずすこと、封を開くことを例示しているが、「その他必要な処分」として、次のような場合が挙げられる。
 ただし、その手段・方法は、最も妥当かつ最小限度のものでなければならず、社会的に相当と評価されるものでなければならない。
(1) 物の損壊
 他に手段がない場合に、必要かつ合理的な範囲において、錠又は扉等を破壊すること。
(2) 未現像フィルムの現像
 証拠価値、留置の可否を判断するために、既存の画像を表す作業にすぎないことから、別に鑑定処分許可状又は検証許可状は必要ない。
(3) 採尿場所までの連行
 強制採尿に際し、在宅の被疑者が任意の出頭に応じない場合、採尿という目的を達成するために必要な処分といえる。
(4) 覚せい剤の予試験
 捜索により発見された覚せい剤様のものにつき、微量を予試験に使用できる。
(5) 走行中の自動車の停止
 自動車を対象とする捜索令状を執行するに際し、当該車両が走行中の場合には、停止させることができる。
(6) コンピュータの使用
 捜索・差押えの対象となった磁気テープ・ディスク類の内容を確認するため、捜索・差押えの場所で、被疑者が使用するコンピュータを使用することができる。
(7) 執行中の電話の使用禁止措置
 通話により、捜索・差押えの実施が阻害されるおそれがある場合には、電話をかけ又は電話に出ることを禁止することができる。