田村警察政策研究センター所長の労作「重要条文解説 警察法」が完成したことを大変喜ばしく思っております。

 田村所長は、平成6年に警察庁長官官房企画課が総務課に統合された後の最初の総務課企画官であり、その在任中に長年絶版であった長官官房編の警察法逐条解説書を「警察法解説(新版)」として執筆編集した、警察行政の在り方について真剣な研究を続けている学究肌の人物であります。また、警察行政法の解説書として定評のある「警察行政法解説」の著者であり、現在も警察政策全体を研究する立場にあることも、本書の権威を高める所似でしょう。


 私自身本書を読んで興味を感じたのは次の3点です。
まず、都道府県警察職員の目線に立って記述していることです。
これは、都道府県警察が警察法第2条第1項の責務に任ずるのが現行警察法の基本であり、都道府県警察こそが国民に対して活動を行う警察の中心であるがゆえに、都道府県警察職員が自らに身近なものとして警察法を学ぶ必要がある、との著者の信念に基づくもので、本書の最大の特徴と言えるでしょう。

 次に、警察刷新・警察改革のために、公安委員会の管理機能の充実等に資するための措置に関する規定の新設、苦情処理に関する規定の新設、警察署協議会の設置といった警察法の改正が平成12年に行われましたが、その改正内容を網羅し、解説を加えていることです。20世紀の世紀末に、国民から、警察の組織内部の問題や対応姿勢に対して厳しい批判がなされたことを踏まえた平成12年の警察法改正は、警察改革において極めて重要なものであり、また、警察改革の中で公安委員会の管理概念の明確化が公安委員会運営規則の改正を通じて行われました。警察改革の持続的断行のためには、すべての警察職員がその内容を正しく理解することが是非とも必要であり、本書はそのために多大の寄与をなすものと確信しております。

 さらに、都道府県警察職員に分かりやすく役に立つ解説書になるよう、色々な工夫がなされていることです。例えば、解説の中で、本文と補足説明を分け、一応の理解には本文だけで足りるようにし、より詳しい内容を求める者には補足説明を読むことで対応できるようにしたり、都道府県警察にとって重要性の乏しいものは思い切って解説を省略しているのは、その表れでしょう。

 以上、私の本書を読んでの感想を中心に述べましたが、本書の刊行を契機として、都道府県警察職員の警察法の理解が進み、21世紀の早い時期に真の警察改革が実現することを期待しています。

平成14年10月     

警察庁次長   
漆間 巌