本書は、過去数年にわたって「Voice」(PHP研究所)、「捜査研究」(東京法令出版)、「警察公論」(立花書房)に掲載した 危機管理関係の論説を取りまとめたものである。
 当初のテーマはテロ事件などの緊急事態への対処を中心としていたが、近年では、危機を産み出し、あるいは危機を増幅 させる組織構造の問題点に対する研究が主眼となり、内部告発問題やエンロン事件のように民間企業の危機管理を取り扱う ケースも増えている。改めて感じるのは、危機管理というものは、危機が発生した際の対処だけでなく、危機の発生を予防 する構造改革、危機を想定した各種の準備作業、危機が終了した後の教訓事項の抽出、そしてこの教訓に基づく再度の構 造改革といった一連のサイクルとして位置付けなければならないということである。さらに、将来に対する不確実性がます ます増大する現代においては、公的部門や民間企業を問わず、組織管理の必須の一部として危機管理をとらえていく必要が あるという思いを強くしている。
 本書が、危機管理に従事される関係者の参考書として、広く活用されることを願って やまない

目次

第1章 テロ事件への対応

焦点1
 炭疽菌事件と生物兵器テロ対策の課題
焦点2
 同時多発テロ事件と今後の展望
焦点3
 ハイジャック対策の現状と展望
焦点4
 チェチェン紛争と劇場占拠事件

第2章 北朝鮮問題の展望

焦点5
 北朝鮮工作船撃沈事件と今後の展望
焦点6
 北朝鮮問題と「不正規戦争」
焦点7
 軍用機等亡命事件の対処

第3章 外務省等の組織改革

焦点8
 北朝鮮難民駆け込み事件と今後の難民対策
焦点9
 機密費流用事件と外務省改革の展望
焦点10
 ペルー事件報告書と今後の課題
焦点11
 内閣の危機管理機能強化のための方策

第4章 企業不祥事への取組み

焦点12
 内部告発の脅威と対策
焦点13
 東京電力の原発トラブル隠蔽事件とその教訓
焦点14
 エンロン事件と資本市場改革
焦点15
 雪印乳業食中毒事件と広報対策

第5章 危機管理の諸問題

焦点16
 情報担当者が陥りやすい「症例」
焦点17
 繁藤災害の教訓
焦点18
 阪神大震災における避難施設の研究
焦点19
 化学兵器の基礎知識と第一次的対処要領
焦点20
 生物兵器の基礎知識と第一次的対処要領