月刊警察2010.6月号
誠にお恥ずかしい私ごとをひとつ。その日,昼下がりの日差しの中,渡る風は薫り,新緑はいよいよ映えるのでした。
清々しく山歩きを終え,湯けむり漂う麓の露天風呂へ。適度な疲労感と湯加減が体の芯まで心地よく沁みてきたころ,湯船の脇に腰かけ,涼をとることに。
気分が悪くなってきたのはその時,次第に意識が遠のいていく中,気が付くと,赤く染まった手や床を見て我に返りました。軽くめまいを起こし,座った状態から前かがみに崩れ落ちたようです。間もなく落ち着き,自力歩行は可能なものの,連休中の混雑,また,地理的に緊急医も遠いことから,やむを得ず救急車を要請させていただくこととしました。応急手当の中,「これは縫わないとだめですね。」と,隊員の声。搬送中の気遣いも温かく,励まされながら病院に入る「急患」。
普段響いてくるそのサイレンには悲痛な思いをさせられるだけでしたが,いざ,我が身が初めてそこに置かれたとき,これほど頼もしい存在はありませんでした。大げさですが,“救命のリレー”に乗って助けられた喜びを実感しています。
日々,市民の安全・安心を見守る皆様には,心から感謝を申し上げます。幸い大事には至らず,右瞼を5針で済み,連休中には完治しました。読者の皆様のお仕事での無事をお祈りするとともに,この傷跡に触れるたび,感謝と協力の気持ちを新たにしたいと思います。
(S)