月刊警察2010.7月号
人前で声を発し,人を叱るのは,とても勇気がいることです。日曜の昼下がり,買い物を終えた私は最寄り駅へと向かう都営地下鉄下り線に乗っていました。日々満員の通勤電車も乗客はまばらで,平日とは少し違った表情を見せます。
すると,途中駅から中学生と思しき5人の少年たちが乗り込み,そのうち2人が私の対面に座りました。残る3人はその前に立ち,5人が席を入れ替わり立ち替わり,叩き合ったり,車両内を走ったり,困惑顔の隣の老女にすらお構いなしの甚だしい傍若無人。その時,私の横に座る,私と同年輩の夫婦の夫が,「てめぇら大人しく乗ってらんねぇのか!」と一喝しました。彼らは急に大人しくなり,謝りもせず,次の駅で降りていきました。
私も全くの同感でしたが,少年たちを目で追いつつ,(他人の迷惑を察しろよ!)と心の中で叫んで睨んでいただけ。声を上げることはできませんでした。
歳をとった証拠でしょうか,若い世代に社会人としての良識の欠如を感じます。否,家庭での躾,個人のモラルの問題でしょうか。他人への協力は拒否しておきながら,自己の権利意識のみを向上させているとしたら,悪しき風潮です。
日々,職務質問をはじめ様々な人に声を発して対応する警察官。私は,安全・安心の実現へ向けて協力するのが,一市民としての建設的な態度・務めであると信じています。
(S)