月刊警察2010.8月号

■殺人の公訴時効廃止
これまでの刑事訴訟法では,「(法定刑の上限が)死刑に当たる罪」である殺人などについて,犯罪後一定期間が経過すると刑事訴追を受けなくなると規定。犯罪が終わった時から,「死刑に当たる罪」については25年,「無期懲役や無期禁錮に当たる罪」については15年,「傷害致死」や「危険運転致死」等の場合は10年,「自動車運転過失致死」や「業務上過失致死」等の場合は5年と定めていた。
これらの時効制度の底流には,一定期間起訴されない状況が続いた事実状態を法的に尊重する考えがあったといわれている。しかし,欧米諸国の大半は重大犯罪において公訴時効の制度を認めていない。また,被害者の家族らの心情に対する配慮や,加害者の“逃げ得”を認めることは社会正義に反するとの意見などから,改正への動きが高まった。
法務大臣の諮問機関である法制審議会の専門部会は平成22年2月,人命を奪った罪のうち,殺人は時効を廃止,それ以外は時効期間を2倍に延長する要綱骨子案をまとめ法務大臣に答申。これを受けて法務省は刑事訴訟法改正案を国会に提出,4月27日,第174回国会において,「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」として成立し,同日公布・施行された。

■シェールガス
泥土が堆積して固まった岩層から産出されるガス。硬くはがれやすい性質の頁岩(シェール)に含まれるため,この名で呼ばれる。従来,採掘が困難で放置されていたが,天然ガス価格の高騰と技術革新により,数年前から急速に開発が進んだ。
膨大な埋蔵量が確認されているアメリカでは,シェールガス供給の実用化により天然資源需給の見通しが一変。液化天然ガス(LNG)の輸入に頼るエネルギー政策が見直され,「シェールガス革命」と呼ばれる増産が起こっている。そのため,世界のガス市場でLNGの価格破壊が起こり,ロシアやカタールなどの輸出国が打撃を受けた。
シェールガスによるエネルギー生産は原油や石炭を燃やすより大気中に排出される二酸化炭素の量が少なくて済むため,クリ―ンエネルギーとしての需要も急増。開発に伴う環境破壊が心配されるものの,今後も増産傾向とみられる。
アメリカに続き,欧州各国も探査に着手。日本企業では三井物産がアメリカのエネルギー会社アナダルコからペンシルベニア州のシェールガス鉱区の権益32.5%を買い取る契約を結び,アメリカの火力発電所などに販売する計画という。また,三菱商事は韓国ガス公社と組み,開発に乗り出す見込みだ。

(本誌「MONTHLY KEY WORD」より抜粋)