月刊警察2010.11月号

■深層崩壊
山崩れ,崖崩れなどが発生した際,地表面にある表層土砂だけでなく,その下の岩盤までが崩れる現象。崩れる土砂が10万?を超えることも多く,被害規模が甚大となる。
原因は,主に岩盤の風化と豪雨であり,変形した岩盤のひび割れなどに雨水が浸透し,水圧で岩盤が崩れやすくなるものと考えられている。発生地域では,一日の降水量が400mmを超える例が多く,通常の土砂災害と異なり豪雨の数日後に発生することもある。
独立行政法人土木研究所によると,国内で発生した深層崩壊は1990年代には19事例だったが,2000年代には24事例に増加。国土交通省では,過去の事例を基に発生頻度を推定した全国マップを作成。調査研究と並行し,警戒避難対策への検討を進めていくという。

■勤務間インターバル規制
労働者の仕事が終了してから次の仕事を開始するまでに,一定時間の休息を義務付ける制度。ヨーロッパ連合(EU)では,加盟国の法律基準を定めた「EU労働時間指令」において最低連続11時間の休息を定めている。例えば深夜0時まで残業をした場合,翌日の勤務は通常の始業時間に関係なく午前11時まで免除され,賃金も変わらない。
この制度に日本の産業別労働組合の情報労連が注目し,昨年の春闘から導入に向けた労使間協議を促進している。インターネット関連などの情報通信産業では24時間対応が必要な仕事も多く,長時間労働や深夜に及ぶ不規則な勤務の解消が課題となっていた。交渉の末,昨年はKDDIなど13社が労使で合意,今年も2社の労使が合意している。

■経済的虐待
他者の財産を不当に処分あるいは侵奪し,経済的境遇において相手に苦痛を与える行為を指す。
近年,高齢者の預金や年金などを親族や擁護者が本人の同意なしに使い込むケースが増加しているが,他の虐待に比べ第三者が事実を確認しにくいため,介護サービスへの支払いが滞ったり,公共料金の口座引落しができなくなったりして判明する場合が多い。しかし,家族が経済的虐待に及ぶ背景には,低所得や失業などの問題も多く,「家族間の支え合い」との線引きは難しいとされる。
一方,事理弁織能力に欠ける知的障害者,精神障害者の親族や擁護者にも同様の事態が見られ,岩手県一戸町の知的障害者更生施設では,理事長が入所者の年金を無断で株式に投資し巨額の損失を出す事件が発生した。

(本誌「MONTHLY KEY WORD」より抜粋)