月刊警察 2012年 8月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

チャイニーズ・ウォール

中国の万里の長城にたとえた証券業界の用語で,インサイダー取引防止のため証券会社の内部に設けられた情報の防御壁を指す。従来から,増資計画などを取り扱う引受部門と,投資家に対し銘柄を提案する営業部門のオフィスを切り離し,双方の立入制限などがなされてきた。

しかし今年3月以降,インサイダー取引への関与が野村,SMBC日興,大和の3大証券会社で相次いで発覚。野村証券では社員が機関投資家に情報を漏らしていたことが判明し,社内調査では,公表前の増資情報が営業部門に頻繁に流れていたことや,銘柄を言わなければ伝えても問題ないという誤った認識が蔓延していた実態が浮き彫りとなった。

野村証券は,機関投資家へ提供する情報の指針策定や録音機能付き携帯電話の使用などでチャイニーズ・ウォールの徹底を打ち出したが,現行の金融商品取引法では情報を漏らすだけでは処罰されないため,法制度の在り方も議論されている。


違法ダウンロード罰則化

著作権者に無断でインターネット上に投稿された動画や音楽などのコンテンツを違法にダウンロードした者に罰則を適用すること。従来は投稿者のみに罰則を適用していたが,改正著作権法が6月に参議院で可決され成立。ダウンロードした者にも2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が適用される改正は,10月1日から施行される。

日本レコード協会が2010年に行った調査では,違法ダウンロードは正規の約10倍に当たる約43億6,000万件で,被害額は約6,600億円に上る。歯止めがかからない海賊版の流通などを背景に音楽業界などが法改正を訴えていた。しかし,罰則の適用対象をどう線引きするのかという懸念の声も強い。


フォレストヒーローズ賞

2011年の国際森林年を記念し国連森林フォーラムが創設した,森林の保全に取り組んだ人をアフリカ,アジア,ヨーロッパ,南アメリカ,北アメリカからそれぞれ選出,その功績をたたえる賞。第1回は世界41か国から90人が推薦され,アジアからは宮城県気仙沼市の牡蠣養殖家・畠山重篤さんが受賞した。

畠山さんは養殖を行う気仙沼湾でしばしば赤潮が発生することから,改善のためにはまず森をつくり,海に流れ込む川の水を豊かにすべきだと主張。1989年から気仙沼湾に流れ込む大川流域で漁師仲間らとともに植林を開始した。その20年以上にわたる活動が評価されての受賞となった。