月刊警察 2013年 3月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

越境大気汚染

他国で排出された大気汚染物質が大気の流れに乗って長距離を移動し,国境を越えて隣国で大気汚染を引き起こす現象。1970年代には欧州全域で酸性雨が生じ,深刻な問題として各国で議論され,長期的越境大気汚染条約が締結されるきっかけともなった。

日本では,中国や韓国で発生した大気汚染物質が偏西風に乗って西日本へ到達することがある。2000年代には中国から飛来した光化学オキシダントの事例があり,この2月にはPM2.5と呼ばれる微小粒子状物質の飛来が問題化した。

PM2.5は,粒子直径2.5マイクロメートル以下の微粒子の総称で,呼吸器の深部に到達し得るため健康被害に直結するといわれている。北京をはじめ中国主要都市では,PM2.5が深刻な大気汚染を発生させており,「北京咳」と呼ばれる呼吸器疾患の原因となっている。


日本版NSC

日本での設置が検討されている国家安全保障会議(NSC=National Security Council)の通称。NSCは,国家の安全を統括的に管理する専門機関で,国防,安全保障等を専任のスタッフが分析し,為政者に適切な助言を与えるとともに各省庁間の連携を手助けする役割等を担う。

日本では,1986年に設置された安全保障会議がNSCに近い機関といえる。この安全保障会議は,国防に関する方針の決定や安全保障に関する審議等を行う場として機能するが,議長や議員は非常勤となっており,緊急時に招集される審議会という位置付けだ。

日本版NSCは2006年,第一次安倍内閣において提唱され検討が開始された。首相退陣に伴い廃案となったが,2012年に第二次安倍内閣が発足し,再度,日本版NSCの検討が開始された。2013年1月にアルジェリアでイスラム武装勢力による人質殺害事件が発生し,日本人複数名も殺害された。このとき日本政府が自衛隊による邦人救出作戦を行えなかった点も,日本版NSCの再検討に拍車をかけることとなった。


卵子バンク

不妊治療の手段の一つとして,第三者から提供された卵子を保存する施設・機関。早発閉経や卵子の機能不全等により健康な卵子を持てない女性への卵子提供を目的とする。日本国内では,2013年1月に民間の卵子バンク「卵子提供登録支援団体」の発足が発表された。田村憲久厚生労働大臣は,精子バンクとともに,その是非に関する議論を再開すべきとの見解を表明している。