月刊警察 2017年 6月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

院内オフィス

入院中の患者が職務に携われるよう通信環境などを整備した病院内のサテライトオフィス。がん治療などで長期入院する患者を支援し,退院後の円滑な職場復帰を促すため,厚生労働省が設置を後押ししている。

同省の推計では,働きながら通院するがん患者は約32万5,000人にも上る。しかし,就労の継続は容易でなく,辞職や辞めざるを得ない配置転換を強いられるケースもあり,3割が辞職しているという。

静岡がんセンター(静岡県長泉町)が2013年に行った,がん患者に対する実態調査によると,企業などで働いていた人のうち「依願退職した」,「解雇された」と答えた人は計34.6%。10年前の同調査での34.7%とほぼ変わらず,改善がみられていない実態が明らかになった。

背景としては,がん治療に対する周囲の理解不足なども指摘される。厚生労働省は今後,企業と医療機関の連携強化を図り院内オフィスの普及を目指す。患者の就労に当たっては,パソコンの使用履歴や院内オフィスへの入退室時間を把握するなどし,長時間労働とならない労務管理の仕組み作りも必要とされる。

准高齢者

日本老年学会・日本老年医学会は高齢者の定義と区分を見直し,新たに65〜74歳を「准高齢者」,75〜89歳を「高齢者」,90歳以上を「超高齢者」とする提言を発表した。

そもそも高齢者の定義に明確な根拠はなく,1959年の国連報告書で65歳以上を高齢者として扱ったことが慣例となり定着したと言われる。当時,世界主要国の65歳以上の割合はおよそ10人に1人だったが,現在の日本においては4人に1人まで増加した。

両学会では高齢者の心身の健康に関する様々なデータを解析。身体機能や知的能力,また,残った歯の数などを同一年齢で比較すると,10年前より5〜10歳若返っているとみられ,死亡率や要介護認定率も減少しているという。

こうしたことから,現在,前期高齢者とされている65〜74歳の大多数は,活発な社会活動ができると判断でき,社会の支え手として捉え直すことも可能に。現行の社会保障や雇用制度のあり方に関しても大きな議論を呼びそうだ。

内閣府の意識調査でも,男性は「70歳以上」,女性は「75歳以上」を高齢者とする回答が最多で,65歳以上を高齢者とすることには否定的な意見が大半だった。提言をまとめた大内尉義・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え,社会参加を促すきっかけになれば」と話している。