月刊警察 2017年 12月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

遺伝子ドーピング

筋肉の成長と修復は体内の生化学分子によって調節されており,その分子は遺伝子によってコントロールされている。近年,人工の細胞や遺伝子を体内に導入することで,筋肉疾患を改善する遺伝子治療が可能となったが,これをアスリートに応用したドーピング方法が秘密裏に進行しているのでは,との懸念が広がっている。

遺伝子ドーピングの手法には,遺伝子を改変した細胞を体内に取り込む方法や,遺伝子配列を人工的に改変するゲノム編集技術などが用いられる。こうした特定遺伝子を筋肉細胞などに注入し,局所的なホルモン生成基地を作る仕組みだ。

赤血球を増量させるエリスロポエチン,体タンパク質合成を促進するヒト成長ホルモン,筋肉増量抑制作用を失った変異体である変異ミオスタチンなどのホルモン遺伝子が,ドーピングに使用される可能性を持つ。

遺伝子ドーピングによって体内で生成されたタンパク質などは筋肉組織中に留まるため,薬物のように血液や尿の検査で検知することができない。また,天然タンパク質と遺伝子ドーピング由来のタンパク質には実質的な違いがなく,検知が非常に困難とされる。

副作用として,赤血球の異常増加に伴う血液粘性増大で血管が詰まったり,筋肉が異常増大したりすることもあるという。世界反ドーピング機関(WADA)が発表した2018年版の禁止薬物リストには,遺伝子ドーピングの一種としてゲノム編集が新たに加えられた。

コンテンツモデレーター

インターネット上に存在する文章,動画,画像などのうち,公序良俗に反するものを削除あるいは閲覧規制する職業の名称。

SNSや動画サイトなど,多様なコンテンツをユーザーが投稿し共有するウェブサービスには,運営企業によって非常に多くのコンテンツモデレーターが雇用されている。Facebookのマーク・ザッカーバーグ CEOは,今年5月,それまで4,500人だったコンテンツモデレーターを7,500人に増員。あるオンラインセキュリティコンサルタントによれば,その数は世界で10万人を超えるともいわれる。

監視対象となるのは,暴力,虐待,殺人,ヘイトスピーチ,テロ,ポルノ,人種差別,自傷など,過激あるいは残酷な内容。このため,見続けることでコンテンツモデレーター自身が精神的に病むケースも多い。業務に際しては適切なケアが必要といわれているが,まだまだ低い報酬で厚生もなく従事する者が多いのが実情のようだ。