〜捜査研究 臨時増刊号〜


実務判例研究会/編著
B5判/232ページ 
バックナンバーはこちら
定期購読のお申し込みは
お電話(0120-338-921)
または
富士山マガジンサービス でも
承っております。Fujisan.co.jpで購入
2005年臨時増刊号「任意活動・任意捜査、逮捕・押収、自首、接見交通、訴因の特定編」はこちら
2006年臨時増刊号「取調べ、近時の重要論点(被害・犯行再現状況書証の証拠能力、接見交通、防犯ビデオ等)編」はこちら
★捜索・差押え等の捜査実務に不可欠な35判例を厳選。

★類似事犯の捜査において、適正・妥当な擬律判断を行うための指針となるべく、様々な判例を取り上げ、内容の充実を図った。

★実際の捜査実務に役立つように、裁判所の判断の背景事情となる「事案の概要」を詳細に紹介し、より実務的な観点の解説を加えた。
発刊にあたって(抜粋)
 判例(最高裁判例に限らず、広く下級審裁判例も含む。)は、実務が様々な局面で生じた当事者との衝突(事案)に対して、被疑者の人権保障と事案の真相を明らかにし、刑罰法令の適正・迅速な適用実現(刑訴法1条)の相克のなかで生まれた所産であり、警察実務はまさにこれらの判例を教訓として、また、判例の見解によって動いているといっても過言ではない。
 そこで、今回、「判例から学ぶ捜査手続の実務―捜索・差押え、違法収集証拠排除法則編―」として、これまで実務において問題となった事案35項について、裁判所はどのような判断を示したか、それを踏まえた実務(捜査手法)はどうあるべきかなど、捜査実務に不可欠な判例を選別して取り上げたものである。
 本書の特徴は、主として平成にあらわれた捜査実務に重要な判例を中心に、裁判所の判断の背景事情となる事案の概要を詳しく紹介した上で、実務的な観点から解説を加えたものである。
 とりわけ、捜索・差押えに係る令状執行をめぐる問題についての下級審から最高裁につながる判例の流れ、さらには、最高裁が昭和53年9月判決により違法収集証拠排除法則を宣明して以来、同法則を適用した判例の流れ(注目すべきは、最高裁が平成15年2月判決により、初めてその証拠能力を否定した。)などは、今後の捜査実務に大いに資するであろうと思う。
 どうか、昼夜を分かたず地域の安全を支えている地域警察官をはじめ、薬物事犯等捜査に携わっている生活安全課や刑事課等の捜査員の方々が、絶えず本書を手元におき、類似の警察(捜査)活動に際しては、有効に活用され自信をもった執行務が図られるよう願ってやまない。
 さらに、本書刊行後にあらわれた新たな判例については、本誌「捜査研究」において実務講座として紹介し、一層の充実を期していくこととしたので、引き続き本誌を愛用され、これらを通じて適正捜査に寄与することができれば望外の喜びである。
 なお、引き続き「任意捜査、逮捕・取調べ、接見交通編」を予定している。

 捜索差押許可状の執行方法の適否が争われた事案
○ 捜索差押許可状の執行に際して、偽名を用いて玄関戸を開けさせて被疑者方に立ち入り、令状呈示前になされた罪証隠滅防止等の措置、その後行った捜索・差押えが違法でないとされた事例
<東京高裁昭和58年3月29日判決・確定 判時No.1120>
○ 捜索差押許可状の執行に際して、宅急便の配達を装って玄関扉を開けさせて被疑者方に立ち入って行った捜索・差押えが違法でないとされた事例
<大阪高裁平成6年4月20日判決・確定 判タNo.875>
○ 捜索差押許可状の執行に際して、令状の呈示に先立って、来意を告げることなくホテル客室のドアをマスターキーで開けて入室した措置が適法とされた事例
<最高裁平成14年10月4日第一小法廷決定 刑集56巻8号>
など、計6事例を掲載
 職務質問・所持品検査・任意同行・逮捕手続・その後の採尿手続の適否、違法収集証拠物の証拠能力(違法収集証拠の排除法則) 等が争われた事案
○ 職務質問に付随して行う所持品検査につき、承諾を得ずに行われた所持品検査が許容されるとした事例
<最高裁昭和53年6月20日第三小法廷判決 刑集32巻4号>
○ 所持品検査に違法があってもこれにより得られた証拠物の証拠能力はこれを肯定すべきとされた事例
<最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決 刑集32巻6号>
○ 任意同行から採尿に至るまでの捜査に重大な違法があるとして、尿の鑑定書の証拠能力を否定し、無罪とされた事例
<大阪高裁平成4年2月5日判決・確定 判時No.1421>
○ 採尿手続に違法があっても被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力は肯定できるとされた事例
<最高裁平成7年5月30日第三小法廷決定 刑集49巻5号>
○ 令状に基づく捜索の現場において、警察官が被疑者に暴行を加えた違法があっても、それ以前に発見されていた覚せい剤の証拠能力は否定されないとされた事例
<最高裁平成8年10月29日第三小法廷決定 刑集50巻9号>
○ 逮捕手続に重大な違法があるとして逮捕当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力が否定された事例 (違法収集証拠物の証拠能力を最高裁が否定した初の事例)
<最高裁平成15年2月14日第二小法廷判決 刑集57巻2号>
○ ホテル客室の宿泊客に対し職務質問を行った際、ドアが閉められるのを防止した措置が適法とされ、また、暴れる宿泊客を制圧しながら、所持品検査により発見された覚せい剤について証拠能力が肯定された事例
<最高裁平成15年5月26日第一小法廷決定 刑集57巻5号>
など、計16事例を掲載
 強制採尿手続に関して争われた事案
○ 強制処分として被疑者の体内から尿を採取するための令状の種類は身体検査令状及び鑑定処分許可状ではなく捜索差押許可状によるべきとするもの
<最高裁昭和55年10月23日第一小法廷決定 刑集34巻5号>
○ いわゆる強制採尿令状により採取場所まで連行することの適否 (任意同行を求めるため現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例)
<最高裁平成6年9月16日第三小法廷決定 刑集48巻6号>
など、計4事例を掲載
 医師による治療中の患者からの尿の任意提出と、この鑑定結果により発付された令状により差し押さえられた新たな尿の鑑定書の証拠能力が争われた事案
○ 医師による治療中の患者からの尿の任意提出が適法として、その尿の鑑定結果等に基づき発付された令状により差し押さえられた新たな尿の鑑定書の証拠能力が肯定された事例
<札幌地裁平成4年9月10日判決・確定 判タNo.805>
 捜索差押許可状の執行に際し、捜索・差押えの範囲などが争われた事案
○ 乙の居住する場所に対する捜索差押許可状の執行に際し、そこに同居する甲がその場で携帯していたボストンバッグを捜索することができるとした事例
<最高裁平成6年9月8日第一小法廷決定 刑集48巻6号>
○ 捜索・差押えに際して、フロッピーディスク等につき内容を確認せずに差し押さえることが許されるとされた事例
<最高裁平成10年5月1日第二小法廷決定 刑集52巻4号>
など、計3事例を掲載
 逮捕の現場における捜索・差押え行為の適否が争われた事案
○ 逮捕した被疑者を最寄りの警察署に連行した上で、その身体又は所持品について行った捜索・差押えが 「逮捕の現場」 に当たり適法とされた事例
<最高裁平成8年1月29日第三小法廷決定 刑集50巻1号>
 交通事故により負傷し意識不明の状態にある被疑者の口もとに呼気採取用のビニール袋をあてがって採取検知した結果の証拠能力が争われた事案
○ 交通事故により負傷して意識不明の状態にある被疑者の口もとに呼気採取用のビニール袋をあてがって採取検知した結果の証拠能力が認められた事例
<浦和地裁越谷支部昭和56年11月6日判決・確定 判時No.1052>
 捜索・差押えに際してなされた写真撮影の適否が争われた事案
○ 捜索・差押えの際に 「差し押えるべき物」 に該当しないものを写真撮影したことによって得られたネガ及び写真の廃棄又は引渡しを求める準抗告が不適法とされた事例
<最高裁平成2年6月27日第二小法廷決定 刑集44巻4号>
など、計2事例を掲載
 その他の事案
○ 呼気検査は呼気を採取してアルコール保有の程度を調査するもので、その供述を得ようとするものではないから、呼気検査拒否罪の規定は、憲法第38条第1項に違反しないとされた事例
<最高裁平成9年1月30日第一小法廷判決 刑集51巻1号>

紙面についてのご意見・お問い合わせはこちら