日本は世界でも有数の地震大国です。歴史上繰り返し地震被害を受けてきました。そして、近い将来、東海、東南海、南海地震をはじめとした巨大地震の発生が予想されています。国全体で適切な対策を採らなければ、国民が安心で安全な生活を営み、国が持続的に発展していくことはできません。
本書が取り上げる「緊急地震速報」は、揺れが来る前に地震の到来を知らせる画期的なシステムです。日本の優れた科学技術と整備された地震観測網があってはじめて実現したものであり、世界にも先例がありません。これにより、揺れが来る前に先んじて対策を打つことが可能となりました。日本の科学者が約40年前に描いた夢が、実現したのです。その上日本では、若者の理科離れが危惧されていますが、緊急地震が理科教育の一環としても役に立つと期待しています。
ただし、このシステムを最大限に活用するには、正確な理解が不可欠です。本書では、緊急地震速報の特性、利用可能性を述べる一方で、その限界と課題を見据えた議論がなされています。
これらを踏まえた上で、先進技術が与えてくれた猶予時間をどのように活用するか。国民、行政機関、企業が自らの危機管理に正確に位置づけ、整備・運用することができれば、地震による被害を減らすことができるのです。
ご一読していただき、今や国民運動の一つとなりました大規模地震対策の推進に、参加されることを願っています。
リアルタイム地震情報利用協議会会長 有馬朗人