本書は、「人口減少」をキーワードに、自治体職員および、自治体に深く関係するシンクタンクの職員が分担して執筆している。専門分野はもちろんのこと、分析の切り口も、人口減少という事象に関するスタンスも様々である。
よく知られているように、わが国は先進国のなかで唯一「人口減少社会」に直面している。これは、明治以降キャッチアップ型の経済的・社会的な発展を実現してきたわが国において、他の国のモデルをそのまま適用することができないということを意味する。総人口が減少したというのも大きな転換点であるが、キャッチアップ型のモデルが通用しないというのも、大きな転換点なのである。
その上、人口減少をめぐる課題は、政策課題が多岐にわたり、それぞれの要素が連関している上、地域の人口動態によっても必要な処方箋は大きく異なっていることが特徴である。海外にモデルがないことが海図のないこととするならば、問題の複雑さは羅針盤のないことに例えることができる。
このような中、地域政策はいかにあるべきか。本書で提起した問題点や提示した処方箋は、部分的なものも多く、体系的でないかもしれない。しかしながら、編者としては、この「多様性」こそが本書の売りであると考えている。それは、このような状況の中では、様々な政策を組み合わせて、「いいとこ取り」をしていくことが必要であるからである。その意味では、読者の方にも、自分が住んでいる、関わっている地域に引きつけて、自分で考えながら読んでいただきたい。
公務員、研究者、市民、学生など、本書が地域政策を考えるすべての人にとって、何か一つでもヒントを提供することができれば、本書の狙いは達成されたと考えている。
本書が、「海図も羅針盤もない航海」の一助となれば幸いである。
編著者