行政、警察、消防、学校をはじめ、自治会・町内会、事業者、NPOなど、地域の安全・安心に関わる全ての方々
本書は、地域の安全・安心活動に関する15の事例について、自治体・警察の実務家及び自治体行政に関わりの深いシンクタンクの研究者が分担して執筆したものである。本書で採り上げた事例は、安全・安心活動におけるコミュニティの役割に注目したもの、条例の活用を考察したもの、住民の目線に立つことの重要性を強調したものなど多岐にわたっている。
本書は、読者が安全・安心に関する施策を立案し、実施するためのヒントを提示するという目的上、「安全・安心を推進することは善いこと」を前提として執筆されている。確かに、地域の安全・安心を維持し、高めていくことの重要性を否定する意見はほとんどないと言ってよいであろう。
しかし、安全・安心を確保するための方法については、異論、反論を含めた様々な議論があることが普通である。例えば、そもそも自治体が防犯カメラを設置する必要があるかどうか、どのような手続きを経て設置するか、何台のカメラをどのような場所に設置するか、撮影したデータをどのように保管・利用・廃棄するかといった点には、費用対効果やプライバシーの観点から多くの意見が提出されるはずである。こうした論点について、一律の回答を示すことは難しい。地域によって事情が全く異なるからである。
そこで、地域の安全・安心の当事者が住民であることを再確認する必要がある。住民同士や議会で十分な議論を尽くして、その地域の実情に即した方法を決定することが極めて重要である。そうしたプロセスを経ないまま、観念的な議論や「上の意向」によって安全・安心活動を展開することは適切ではないと思われる。
本書が、だれもが安全で安心して暮らせる地域づくりの一助となれば幸いである。
編著者