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捜査研究臨時増刊号
判例から学ぶ捜査手続の実務 特別編(1)

編著/監修
細谷 芳明(元栃木県警察学校長,元警察署長,専修大学大学院法学研究科修士課程)
体裁
B5判  136ページ
定価
1,324 円(消費税込み)
本体価格+税
1,204 円+税
ISBN
ISBN978-4-8090-1334-8
C3032 \1204E
発行日
平成27年8月5日
内容現在
平成27年7月15日
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本書の特色

<必ず捜査実務に役立つ、これまでの判例学習書の上をいく決定版 第1弾!>

  • 判例の考え方が身につく!
    「留置き」の適法性の判断基準を、過去の判例と、二分説(論)をとる近時の判例の考え方を踏まえて検討。
    ・「強制手続への移行段階」における「有形力行使の許容限度」について、昭和61年から平成25年までの重要判例をもとに検討。
  • 実務に役立つ!
    ・判例紹介・解説をした上で、「留置き」の在り方について、「純粋な任意捜査段階」と「強制手続への移行段階」の各段階における捜査実務(現場)上の留意点まで言及し、捜査機関の指針を示す。
    ・単なる判例解説とは異なり、「事案の概要」を詳細に紹介。裁判所の判断の背景事情となった現場の情景が目に浮かびやすく、学習だけではなく実務にも役立つ。
  • 学習にも確認にも使いやすい!
    ・「判決要旨」「事案の概要」「判決(決定)」「解説」のいずれから読んでも理解しやすい構成。じっくり学習を深めたいときにも、サッと確認したいときにも便利。

発刊にあたって

職務質問等の過程で、覚せい剤使用の嫌疑が濃厚であるにもかかわらず、その対象者が、任意による採尿に応じない場合において、強制採尿を前提としてなされる「留置き」の考え方について、最近、東京高裁が初めて純粋に任意捜査段階と強制手続への移行段階とに二分して判断するという新たな判断枠組みを判示した。

そこで、本書は、この二分説(論)が捜査手続上、極めて明快な判断基準たり得るとの理解の下、実務的視点から、「純粋に任意捜査として行われている段階」にあっては、説得の時間的な関係を考慮しつつ、その説得を断念し、強制採尿令状請求に移行するための考慮要素を、次に、強制採尿令状の発付・執行に向けて行われた「強制手続への移行段階」にあっては、強制採尿令状請求準備から当該令状の発付・執行までに要する時間内に留め置いた被疑者が退去行動に出た場合に、その退去阻止のためになされる有形力行使の許容性とその限界を、それぞれ関連する最高裁判例及び裁判例を中心に分析・検討したものである。

本書は、筆者が専修大学大学院法学研究科修士課程において、刑事訴訟法を専攻し、「違法収集証拠排除法則」を研究テーマとする中で、平成27年3月に「専修法研論集」第56号に「強制採尿を前提としてなされる「留置き」の適否をめぐる問題」について発表した 「学術論文」 を、 新たに捜査実務 (現場) 向けに 「実務書」 として構成し直したものである。

現下の覚せい剤情勢をみると、依然として、検挙人員が1万人を超え、このうち暴力団構成員等の検挙人員が過半数を占めているなど、社会に浸透した厳しい現状が浮かび上がっており、引き続き当面の重要課題である。そこで、鋭意、覚せい剤捜査を推進するに当たり、今後の覚せい剤使用事犯の捜査実務(現場)において、いかなる対応をすることが捜査手続上、最も相応しいといえるかにつき、一つの判断指標を示した本書が、その拠りどころとなるならば、幸甚に思うところである。

なお、本学の「専修法研論集」の本「学術論文」に注目され、熱心に「実務書」としての発刊をお勧めいただいた『捜査研究』編集室の皆様、迅速に校正作業を進めてくださったスタッフの皆様に厚くお礼申し上げます。

平成27年8月

細谷 芳明


目次

  • 第1 留置きをめぐる判例(裁判例)のエッセンスから学ぶ捜査実務のあり方
    • 1 「留置き」の擬律判断につき捜査実務(現場)への提言
      • 1 捜査実務上、極めて明快な判断基準としての二分説(論)
      • 2 二分説(論)を踏まえた捜査実務のあり方
  • 第2 強制採尿令状の発付・執行のための留置き行為の適法性が争われた主要(裁)判例
    • 2 任意採尿のための説得及び強制採尿令状の請求と取調べ室への留置きについて、留置きが純粋に任意捜査として行われている段階と、強制捜査令状の執行に向けて行われる段階とを分けて検討するとした上で、留置き行為等は任意捜査として許容される範囲を逸脱したものとはいえないとされた事例〈東京高裁平成21年7月1日判決 判タ1314号302頁〉
    • 3 強制採尿令状の請求手続に取りかかった後、被疑者を職務質問の現場に留め置いた措置は、違法不当とはいえないとされた事例〈東京高裁平成22年11月8日判決・確定 判タ1374号248頁〉
    • 4 任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしても、その後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例〈最高裁平成6年9月16日第三小法廷決定 刑集48巻6号420頁〉
    • 5 留置きについての平成21年東京高裁判決及び平成22年東京高裁判決が示した新たな判断枠組みを踏まえ、平成6年最高裁決定をどう理解するか
      • 1 平成6年最高裁決定における判示 60
      • 2 『最高裁判所判例解説 刑事篇(平成6年版)』の指摘 61
      • 3 「純粋な任意捜査段階」と強制採尿令状の発付・執行に向けた「強制手続への移行段階」への当てはめ
    • 6 尿の提出及び押収手続は違法性を帯びるが尿についての鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例〈最高裁昭和61年4月25日第二小法廷判決 刑集40巻3号215頁〉
    • 7 被告人に対する職務質問から強制採尿に至る一連の手続中には、被告人を現場に留め置いた措置に違法があるといわざるを得ないが、強制採尿により得られた証拠の証拠能力は肯定できるとされた事例〈東京高裁平成20年9月25日判決 東京高裁判決時報(刑事)59巻1〜12号合併号83頁〉
    • 8 覚せい剤使用の嫌疑が認められた被疑者を、職務質問開始から強制採尿令状の発付を受けて本件現場に戻るまでに約5時間32分、その後警察署に任意同行した被疑者に同令状を呈示するまで約6時間22分留め置いた措置について、警察官による有形力行使の程度、強制採尿令状請求の準備が開始された状況等からすると、違法な点は認められないとされた事例〈東京高裁平成25年1月23日判決 刑事法ジャーナル39号128頁〉
  • 第3 「強制手続への移行段階」 での任意捜査における 「有形力の行使」 の限界
    • 9 任意捜査において許容される限度内の有形力の行使と認められた事例
        〜強制採尿令状の発付・執行に向けた「強制手続への移行段階」における「有形力行使」の限界を考える手がかりとして〜〈最高裁昭和51年3月16日第三小法廷決定 刑集30巻2号187頁〉
    • 昭和51年最高裁決定を踏まえ、平成22年東京高裁判決及び平成21年東京高裁判決について、強制採尿令状の発付・執行に向けた「強制手続への移行段階」における「有形力の行使」の許容限度の検討
      • 1 昭和51年最高裁決定と平成22年東京高裁判決との関係
      • 2 昭和51年最高裁決定と平成21年東京高裁判決との関係

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