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捜査研究臨時増刊号
判例から学ぶ捜査手続の実務 特別編(2)

編著/監修
細谷 芳明(元栃木県警察学校長,元栃木県警察署長,専修大学大学院法学研究科修士課程修了)
体裁
B5判  240ページ
定価
2,037 円(消費税込み)
本体価格+税
1,852 円+税
ISBN
ISBN978-4-8090-1348-5
C3032 \1852E
発行日
平成28年8月5日
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本書の特色

本書のテーマは、「違法収集証拠排除法則」です。現場での対応や公判等において、留置きとともに問題になることが多い違法収集証拠について、重要判例や、転換期となった平成15年以降の無罪判例を多数紹介しながら徹底解説します。


  • 類書にないほど多数の関連判例を紹介。
  • 他の書籍と一線を画す詳細な事案の概要。
  • 実務上の問題点、他判例との関連性に言及した解説。
  • 現場において警察官が執り得る、よりよい対応にも言及。

※「判例から学ぶ捜査手続の実務 捜索・差押え、違法収集証拠排除法則編」(平成16年刊)では扱っていない判例を多数掲載しており、内容はほとんど重複しません。


発刊にあたって

本書は、私が専修大学大学院法学研究科修士課程において、違法収集証拠排除法則を研究テーマとし、修士論文として提出した「違法収集証拠排除法則の一考察〜平成15年最高裁判決以後の証拠排除裁判例の類型別考察〜」を実務書として発刊するものである。

違法収集証拠排除法則は、アメリカ合衆国連邦最高裁判所が、1914年、ウィークス事件において、初めて連邦捜査官による連邦事件において採用し、その後、1961年にマップ事件において、全ての州事件においても適用することを確認したものであり、これは我が国の判例・学説にも大きな影響を及ぼしたといわれる。

いうまでもなく、我が国の最高裁判所は、昭和53年にいわゆる「大阪覚せい剤事件」において、初めて違法収集証拠排除法則の採用を宣明し、その後、平成15年にいわゆる「大津覚せい剤事件」において、最高裁判所として初めて違法収集証拠の証拠能力を否定した。

この間、専ら覚せい剤事犯において同法則適用の可否が争われ、これに関する最高裁判例や多くの下級裁判所の裁判例が登場している。

本書では、まず、連邦・州事件を問わず一律に違法収集証拠排除法則を適用することを確認したアメリカ合衆国連邦最高裁のマップ事件判決、次に、我が国における同法則に関する最高裁の動向、つまり同法則に関しての黎明期、同法則の採用・適用の足跡を通観しながら、特に、平成15年最高裁判決以後において、高等裁判所、あるいは地方裁判所が証拠排除した裁判例10件(無罪・確定)を個別に検討・評価した。その上で、違法と認定された捜査手続を違法類型別に分類し、さらに、その捜査手続上の問題点を探求・指摘し、当時の捜査員にとって他に執り得たよりよい対応可能性を提示することとしたものである。

現在の薬物情勢、とりわけ覚せい剤事犯は、全薬物事犯の8割を超え、しかも検挙人員も依然として1万人を超え、かつその再犯者は検挙人員の6割を占め、特に暴力団構成員等の検挙人員が過半数を占めるなど、社会に浸透した厳しい現状にあるため、その捜査・検挙は最重点事項である。

加えて、警察組織においては、急速な世代交代とともに、若年化が進み、捜査技能の伝承・習得が喫緊の課題となっている。

このようなことから、違法収集証拠排除法則の一考察として、先に発刊した『特別編・ 強制採尿を前提としてなされる「留置き」の適否をめぐる裁判例と捜査実務(現場)への提言』とともに、本書が、職務質問・所持品検査、任意同行、取調べ、強制採尿令状の請求等における適正な捜査手続の推進に有効に活用されることを願っている。

平成28年8月

細谷 芳明


目次

  • 第1 マップ判決で示された違法収集証拠排除法則
        (The exclusionary rule)
    •  
  • 第2 戦後の排除法則にかかる黎明期の判例の動向
    • 1 押収物は押収手続が違法であっても物それ自体の性質、形状に変異を来すはずがないからその形状等に関する証拠たる価値に変わりはないとされた事例
        〈最高裁昭和24年12月13日第三小法廷判決 裁判集刑事15号349頁〉
    • 2 麻薬不法譲渡につき、被疑者が他出中であったが、帰宅次第、逮捕する態勢の下、不在中になされた捜索・差押えにかかる麻薬に対する鑑定書につき証拠とすることに同意し、異議なく適法な証拠調べを経たときは、当該捜索・差押え手続が違法であったかどうかにかかわらず証拠能力を有するとされた事例
        〈最高裁昭和36年6月7日大法廷判決 刑集15巻6号915頁〉
  • 第3 違法収集証拠排除法則を採用するも証拠排除しなかった事例
    • 3 証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合には、証拠能力は否定されるとされた事例
        〈最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決 刑集32巻6号1672頁〉
  • 第4 昭和53年最高裁判決以後、違法収集証拠排除法則を適用するも証拠排除しなかった事例
    • 4 覚せい剤使用事犯の捜査に当たり、被疑者宅寝室への承諾なしの立入り、明確な承諾のない任意同行後、留置きなど、一連の手続に引き続く尿の提出及び押収手続は、違法性を帯びるが、尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例
        〈最高裁昭和61年4月25日第二小法廷判決 刑集40巻3号215頁〉
    • 5 被質問者を警察署に連行した上、その状況を直接利用して所持品検査及び採尿を行った場合、その手続に違法があっても、連行の際に被質問者が落とした紙包みが覚せい剤と判断され、その時点で逮捕が許された本件事情の下では、違法の程度はいまだ重大とはいえないから、覚せい剤等の証拠能力は否定されないとされた事例
        〈最高裁昭和63年9月16日第二小法廷決定 刑集42巻7号1051頁〉
    • 6 任意同行を求めるため被質問者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしても、その後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は肯定できるとされた事例
        〈最高裁平成6年9月16日第三小法廷決定 刑集48巻6号420頁〉
    • 7 所持品検査として自動車内を承諾なく調べた行為及びこれに基づき発見された覚せい剤所持の現行犯逮捕手続には違法があり、引き続く採尿手続も違法性を帯びるが、覚せい剤所持等の嫌疑があり、所持品検査の必要性、緊急性が認められる状況の下でなされ、また、採尿も応諾に基づきなされているなどの下においては、尿の鑑定書の証拠能力を肯定できるとされた事例
        〈最高裁平成7年5月30日第三小法廷決定 刑集49巻5号703頁〉
    • 8 ホテル客室において、宿泊客に職務質問を行ったところ、覚せい剤事犯の嫌疑が飛躍的に高まった状況下で、財布内の所持品検査から覚せい剤を発見したなどの事情の下で、暴れる全裸の宿泊客を約30分間にわたり制圧していた事実があっても、覚せい剤の証拠能力を肯定できるとされた事例
        〈最高裁平成15年5月26日第一小法廷決定 刑集57巻5号620頁〉
  • 第5 違法収集証拠排除法則を適用し、初めて証拠排除した事例
    • 9 逮捕手続には、逮捕状の呈示がなく、緊急執行もされていない違法があり、これを糊塗するため、逮捕状に虚偽事項を記入し、公判廷において事実と反する証言をするなどの経緯全体に表れた警察官の態度を総合的に考慮すれば、逮捕手続の違法の程度は、令状主義の精神を潜脱し、没却するような重大なものであり、逮捕当日に採取された尿の鑑定書の証拠能力は否定されるとされた事例
        〈最高裁平成15年2月14日第二小法廷判決 刑集57巻2号121頁〉
      • 第1節 はじめに
      • 第2節 事案の概要及び裁判所の判断
      • 第3節 平成15年最高裁判決の検討・評価
  • 第6 平成15年最高裁判決以後の下級裁判所における証拠排除裁判例の類型別考察
    •  
      • 第1節 証拠排除裁判例の類型別考察の趣旨
      • 第2節 証拠排除裁判例(10裁判例)の類型別考察
    • 任意同行の際に強度の実力行使があったところ、これを隠蔽し、更に公判廷で強度の実力行使を正当化するために不自然な供述をし、その不公正な態度をとっていることを考え合わせると、本件捜査の違法は、令状主義の精神を没却するような重大なものとなり、将来における違法捜査抑制の見地から、尿の鑑定書の証拠能力を否定されるとされた事例
        〈宇都宮地裁平成18年8月3日判決 LEX/DB28115447〉
    • 公務執行妨害罪の成否に疑義ある現行犯逮捕の下で、車両内から発見された大麻等の証拠能力がその発見に至るまでの一連の手続に重大な違法があるとして否定された事例
        〈東京高裁平成19年9月18日判決 判タ1273号338頁〉
    • 覚せい剤自己使用の事案において、尿の採取が浮浪罪(軽犯罪法違反)での現行犯逮捕という違法な逮捕による身柄拘束中に行われたことを理由に証拠収集に重大な違法があるとして、鑑定書の証拠能力が否定された事例
        〈大阪高裁平成21年3月3日判決 判タ1329号276頁〉
    • 車内にあったウェストバッグを2回にわたり開披し検査して覚せい剤を発見し、現行犯逮捕した行為は、令状主義を潜脱する意図の下で違法な捜索行為に及んだもので、その後の採尿手続も先行する違法な手続によりもたらされた状態を直接利用し、全て任意とはいえない状況下で行われたものであったとして、鑑定書の証拠能力が否定された事例
        〈京都地裁平成22年3月24日判決 LEX/DB25463373〉
    • 長時間にわたる違法な留置き、無令状での身体検査、腕に注射痕がない事実を殊更に隠しての強制採尿令状請求といった強制採尿に至る一連の捜査過程に、重大な違法があるとして鑑定書の証拠能力が否定された事例
        〈松山地裁平成22年7月23日判決 判タ1388号375頁〉
    • 採尿を求めるための心理的圧迫、体調不良の中、留置委託のため取調室に翌朝まで待機させ、その後の採尿が違法な捜査手続・取扱いによる影響の累積によってなされたもので、一連の捜査過程に重大な違法があるとして、鑑定書等の証拠能力が否定された事例
        〈東京地裁平成23年3月30日判決及び証拠決定に係る東京地裁平成23年3月15日決定 判タ1356号237頁〉
    • 所持品検査は職務質問に付随するものとしての許容範囲を逸脱した違法なもので、実質的には無令状での身体に対する捜索に等しいというべきものであり、しかも所持品検査の実態を殊更に隠した報告書によって強制採尿令状を得たばかりか、公判廷でもその実態を隠蔽しようとしたものであるとして、鑑定書等の証拠能力が否定された事例
        〈東京地裁平成24年2月27日判決 判タ1381号251頁〉
    • 嫌疑を欠く違法なものであることを認識しながら、公務執行妨害罪での現行犯逮捕、その逮捕の違法を糊塗するための逮捕手続書の虚偽記載、公判廷での虚偽証言に重大な違法があると評価され、逮捕後の採尿についての鑑定書等の証拠能力が否定された事例
        〈東京高裁平成25年1月16日判決 東京高裁判決時報64巻18頁〉
    • 捜索・差押えや逮捕をしない旨虚偽の約束をさせて直接得られた第1次的証拠である自白のみならず、第2次的証拠である覚せい剤及びその鑑定書等の証拠能力が否定された事例
        〈東京高裁平成25年7月23日判決 判時2201号141頁〉
    • 実質的に違法な身柄拘束(逮捕)の中で、尿を提出したものであり、その尿及びこれに関連する証拠は違法な捜査によって収集された証拠というべきであり、そしてその違法は重大なもので到底看過できるものではなく、将来の違法捜査抑制の観点からも、司法の廉潔性保持の観点からも鑑定書等の証拠能力が否定された事例
        〈静岡地裁平成25年11月22日判決 LEX/DB25502392〉
  • 第7 下級裁判所における証拠排除裁判例の類型別分類と捜査実務(現場)への教訓
      • 第1節 はじめに
      • 第2節 証拠排除の類型別分類
      • 第3節 違法と評価された捜査に対し、 捜査員が公判廷においてとるべき態度

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