月刊警察2010.6月号

■メディカル・ツーリズム
医療サービスと観光とを組み合わせたパッケージツアーを指す。医療機関がホテル並みの施設とサービスを用意して患者を迎え入れ,高度な医療技術を低価格で提供するとともに,近辺の観光なども行う。
欧米では医療費が高額になり過ぎたため,医療費の割安なアジア諸国へ渡航し,現地の病院で治療を受ける患者が増加したといわれる。特に,インドへのメディカル・ツーリズムが人気で,医療技術の高さと英語が通じる気楽さが受けているという。
欧米の患者のみならず,中国やアラブなどの富裕層もターゲットで,シンガポール,タイ,台湾など各国政府が主導で顧客獲得に乗り出している。内容は心臓外科手術,生体肝移植,人工生殖などの高度先端医療から,人間ドック,美容整形など多岐にわたる。
日本でも千葉県の亀田総合病院,福島県の南東北医療クリニックなどが今春から参入。
観光庁は中国の富裕層を対象としたメディカル・ツーリズムの振興を後押しする方針で,国内10か所ほどの医療機関と協力し,がんの早期治療や脳外科,形成外科などの診療を用意することにしている。今後は中国の医療機関とのカルテ共有など,医療機関側の不安を解消する方策も検討する考えだ。

■希望留年制度
大学卒業時期になっても企業から就職内定を得ていない学生に対し,在学を認める制度。本来なら卒業に必要な単位を取得しているため留年はできないが,本人が希望する場合は留年を認める制度を設ける大学が増えてきた。
近年の就職難で内定を得られる学生が少ないことや,企業が新卒を優先して採用するため,「就職浪人」となるより大学に残った方が就職活動に有利であると考慮。希望留年の場合は授業料を半額程度にする大学が多いようだ。
青山学院大学は今年の春から希望留年制度の導入を発表。「就職活動の継続など明確な理由がある場合は有用な準備期間としてもらう」と述べている。また,卒業に必要な単位を満たした学生の在学を認める「卒業延期制度」を導入した成蹊大学では,今年2月の申請期限までに昨年の倍近い約90人が申し込んだという。
過去最低の内定率という厳しい就職状況の中,ある地方大学で就職支援を担当する職員は,「本来,卒業できるならすべきだが,新卒にこだわる企業は多い。『新卒に限る』としている大企業もあるのが現状だ」と話す。企業の行き過ぎとも思える“新卒主義”を心苦しく思う大学関係者も,少なくなさそうである。

(本誌「MONTHLY KEY WORD」より抜粋)