月刊警察2011.8月号

■犯罪インフラ
犯罪を助長,あるいは起こしやすくする環境のこと。警察庁が挙げている事例には,他人名義の携帯電話,匿名性を高めるインターネットの無線LAN,住所を偽装できる郵便の私設私書箱,犯罪収益の入金などに使う他人名義の預貯金口座といった「ツール型」,就労資格のない来日外国人への不当就労あっせん,不法滞在を助ける住居のあっせん,不正に医療行為を行う無許可の病院や薬局といった「生活基盤型」,パスポートや運転免許証など身分証の偽造,在留資格を不法に得る偽装結婚,苗字などを変える偽装養子縁組といった「偽装型」がある。
警察庁では関連情報を集約・分析する対策室を設置し,外国人や暴力団をはじめとする組織犯罪や薬物銃器事犯,振り込め詐欺,サイバー犯罪,国際テロなどを担当する15課で扱うことにしている。

■担い手経営体
全国農業協同組合中央会(JA全中)が発表した農業改革案で,今後5年間に全国の水田経営農家を集落ごとにまとめる計画のこと。1集落に1人の担当者を配置し,平地では農地規模20〜30ha,中山間地で10〜20ha程度を1つの経営体として,効率的に農業を行うことを意図する。専業農家や農業生産法人などが各経営体の担い手となり,兼業農家や定年後の帰農者は,用排水路や農道の維持などを担当して経営体を支える。
「耕作放棄地の発生ゼロ」を目指し,担い手が農地を集積するまでの間は,農協が農地の耕作や管理も行うことにしている。1経営体当たり20haの集積が実現したとすると,現在140万戸の米農家が10万〜15万程度の経営体に再編される見込み。

■小水力発電
出力1万kW以下の水力発電のこと。二酸化炭素排出量が極めて少ないクリーンエネルギーで,河川や農業用水,上下水道などの場所で小規模な流量や段差を利用し発電することが可能。今年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に,エネルギーシフトの見直しが行われ,注目されるようになった。
風力や小水力などの自然エネルギーを電力会社が買い取る制度の導入に合わせ,大手商社の丸紅(株)は2012年度中に山梨県内で小水力発電所を3か所稼働させ,国内に保有する小水力発電の能力を現状の約2倍まで引き上げる計画という。
日本国内では大型水力発電所の建設適地が少なくなっており,今後はこうした小水力発電が増加すると予測される。

(本誌「MONTHLY KEY WORD」より抜粋)