月刊警察 2016年 2月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

湾生(わんせい)

太平洋戦争以前,日本統治時代の台湾で生まれ育った日本人の総称。台湾生まれでなくても,長期にわたり少年期や青年期を台湾で過ごした人々も含む。

敗戦によって日本は台湾の領有権を放棄し,中華民国政府は日本人を全員帰還させる方針を採ったため,1949年までに約20万人の湾生が日本へ引き揚げた。その多くは,日本人として暮らしながらも,故郷である台湾を心のよりどころとし,異質なアイデンティティーを秘めて生きてきたといわれる。

昨年には台湾で湾生を取り上げたドキュメンタリー映画が公開され,興行収入1億円を超える異例のヒットを記録。戦後70年を経て,湾生たちが故郷である台湾へ帰り,懐かしい人々や風景と再会,台湾への愛惜や戦後の人生を語るという内容だが,湾生世代だけでなく若い世代にも評価されている。

ヒットの背景には,日本統治時代を古き良きものとして重んじる「懐日」と呼ばれる風潮もあるようだ。台湾には同時代の建築物や産業遺産が多く,これらの保存,再活用を通じ「日式」を残そうという取組が各地で活発化しているという。また,近年,台湾で中国との乖離が認識されるなか,郷土愛が盛んに強調されるようになり,「日本人も愛した台湾」が琴線に触れたとも考えられる。

MCI (Mild Cognitive Impairment)

健常者と認知症の中間にあたる軽度認知機能障害のことで,日常生活に支障はないが,一部の認知機能(記憶,決定,理由づけ,実行など)に障害が発生している状態を指す。

MCIの定義は,@記憶障害の訴えが本人または家族から認められている,A日常生活動作は正常,B全般的認知機能は正常,C年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する,D認知症ではない,という5点。

MCIの原因となる原疾患を放置すると認知機能の低下が続き,5年間で約半数が認知症へ進行するといわれている。厚生労働省の資料では,認知症とその予備軍とされるMCI人口は約862万人で,65歳以上の4人に1人に当たるという。

認知症になると,治療や投薬で進行を遅らせることはできても完治は困難なため,MCIの段階で早期発見し,認知機能低下に対する適切な対策を行うことが重要で,手軽なMCIチェックテストなども注目されている。

予防としては,体験したことを記憶として思い出す,複数の事柄をそれぞれに注意を払いながら行う,新しいことに取り組み,段取りを考えて実行する,など認知機能を重点的に使うことが挙げられている。