月刊警察 2016年 12月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

過労死ライン

過労死を引き起こす健康障害リスクが高まるとみなされる時間外労働時間を指し,「月平均80時間を超過している勤務状況」,「発症前1か月間におおむね100時間」などと規定されることが多い。特に時間外労働時間が45時間を超えると注意が必要だともいわれる。

2001年の厚生労働省の通達には,労災認定の対象となる過労死の原因となり得る疾患の発生に関し,「発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できる」との見解が示されている。過労死の原因として想定される疾患は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等」,つまり脳梗塞,くも膜下出血,心筋梗塞といった急性疾患である。

2014年には「過労死等防止対策推進法」が成立していたが,月100時間超の残業で過労自殺した電通の女性新入社員の労災認定が成立した今年10月,厚生労働省は同法第6条に基づき世界初となる「過労死白書」(過労死等防止対策白書)を公表した。過労死ラインである「月80時間超」に該当する労働者を抱える企業は,全体の2割以上に及ぶともいわれている。

アシッドアタック

硫酸・塩酸・硝酸などを他者の顔や頭部などにかけて火傷を負わせ,顔面や身体を損壊に至らしめる行為。別名,酸攻撃。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌によると,アシッドアタックの被害者数は年間1,500人にも及び,8割が10〜30代の女性という。特に問題化しているのはバングラデシュ,パキスタン,インド,コロンビアのほか,アフリカや南米などの諸国。男性優位の傾向が強い地域に多く,劇物である酸が安価で入手できることも一因とみられる。

国連の調査では,交際や縁談を断られたことに対する恨みや嫉妬から,男性が相手の女性に苦痛を与える目的でアシッドアタックを行う現状が報告されている。被害を受けても報復を恐れ,あるいは被害者が十分な教育を受けていないために通報に至らないケースが多々あり,裁判に持ち込まれることはまれだ。

酸を浴びせられると,外見を著しく損なうばかりか失明や呼吸困難,ひどい場合は死に至ることもある。生存できても再建のため皮膚移植や整形手術を余儀なくされ,精神的ショックに生涯苦しめられる。

インドでは2013年に被害者への救済策制定とともに酸の売買に規制がかけられたが,さしたる効果は上がっていない。