月刊警察 2017年 10月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

Em-Net(エムネット)

行政専用の通信回線「LGWAN」を利用し,国と地方自治体との間で緊急情報を双方向通信するシステムの通称。首相官邸が指定した都道府県・市町村へメッセージを発信すると,当該地域の配信先端末で着信と同時に強制アラーム音が鳴り,注意喚起を促す仕組み。

緊急伝達システムにはほかに,総務省消防庁が通信衛星を使って運用するJ-ALERT(全国瞬時警報システム)があるが,一自治体当たり平均700万円以上の費用がかかるため普及が遅れていた。

これに対し,Em-Netは,一般的なパソコンとスピーカーがあれば,専用ソフトをインストールするだけで利用できることから急速に普及。通常のインターネットからは完全隔離された閉域のネットワークであるため,有事における緊急情報の迅速かつ確実な伝達が期待される。

2006年の導入以来,Em-Netによる発信事例は2009年と2012年に各2回,2016年に1回,いずれも北朝鮮が発射した飛翔体に関する注意喚起として運用された。今年は8月29日早朝に,北朝鮮が長距離弾道ミサイルと思われる飛翔体を予告なく発射した際,北日本の広域でEm-Netによる緊急警報が伝達された。

国石

国の象徴と位置付けられた石。国花や国鳥などに比べ馴染みが薄いものの,昨年,日本鉱物科学会がひすいを国石に選定した。

選定時の条件は,@国内で広く知られる国産の美しい石であること,A鉱物科学や地球科学などの分野で世界的重要性を持つこと,B長期間,広範囲にわたり日本人の生活に関わり利用されていること,C産出が現在まで継続していること,D野外での見学が法律による保護などで持続可能であること,である。

国内では新潟県の糸魚川周辺地域が最大のひすいの産地で,糸魚川市の大角地遺跡で発見された,約7千年前(縄文時代前期)のものとみられる石器は,世界最古のひすい加工品といわれている。

世界の国石は,スイスが産地でもあり水晶振動子を使った時計産業が盛んであることから水晶,フランスは歴代の王妃が好んだことから真珠,ドイツはバルト海沿岸がその産地として知られる琥珀,トルコは産地ではないが重要な交易品だったことからトルコ石。その国の地理や歴史と深い関わりを持ち,国民に親しまれた石が選ばれている。

選定方法は各国によって異なり,法律や議会の議決,国民投票など様々。日本の場合は国が公式に認めた見解でなく,非公式な性質のものだ。