月刊警察 2018年 10月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

香害

芳香剤や洗剤,柔軟剤などに含まれる香りの成分が,頭痛や吐き気などの健康被害を招く問題の総称。人工的な香りの成分は揮発性化学物質であるため,強い香りの中で長く生活していると化学物質過敏症を引き起こす可能性がある。一旦発症すると,わずかな成分にも反応してしまい,体調不良に陥る場合も。

「香害」という表現は,香り・臭いに起因する心身への悪影響を指し,きつい香水やタバコ臭などに不快感を催す状況を香害と呼ぶこともある。しかし,不快や嫌悪の対象にとどまる場合は「スメルハラスメント」(スメハラ)と呼び,影響が健康被害にまで及ぶ香害と区別される。

香害は,当事者にとっては日常生活を送れないほど深刻なものであるにもかかわらず,一般には理解されにくい。香料の使用を控えてほしいと訴えても,神経質なスメハラ告発とみなされるケースが少なくない。

日本消費者連盟が昨年夏,電話相談室「香害110番」を開設したところ,2日間の開設期間に200件以上の相談があった。その後,同連盟や化学物質過敏症支援センターなどの市民団体が,消費者庁や洗剤メーカーなどに啓発・改善を要求してきたが,解決につながる動きはみられていない。

打ち言葉

電子機器へのテキストの入力において表現される言葉。文化庁は今年3月,近年のコミュニケーションのあり方と,言葉遣いに関する資料「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」をまとめた。その中で電子メールやSNS上のやり取りに用いられる特殊な表現を,「話し言葉の要素を多く含む新しい書き言葉」として区分し,「打ち言葉」と呼んでいる。

打ち言葉は文字で表現される点で「書き言葉」ではあるが,比較的短時間で,かつ一回のやり取りで交わされる情報量も少ない媒体では,くだけた「話し言葉」により近づく。また,絵文字などの記号が多用され,書き言葉だけでは表現しづらい話者の感情などを加える特殊な方法もよくみられる。

意図的に誤記・誤変換する表記も多く,例えばOKを表す「おk」,アカウントを意味する「垢(あか)」,お疲れさまの意の「乙(おつ)」,主に文末につく(笑)の意味でwaraの頭文字wを草の形に見立てた「草(くさ)」なども打ち言葉独特の表記として特筆される。

上記の報告書では打ち言葉を新しいコミュニケーションの形と認めつつも,世代差などもあり,誰にでも通じるものではないと指摘している。