月刊警察 2019年 11月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

オピオイド

ケシの成分やその化合物から作られる医療用麻薬。アメリカでは1990年代から「依存性リスクが低い」として,がんや外傷の鎮痛薬に処方されてきた。しかし,実際には陶酔作用を伴うことから常習者が蔓延しており,濫用による死者数は,交通事故死を上回る1日平均130人以上に達している。

CNNでは,連邦保護・人的サービス省がまとめた公式データとして「鎮痛薬オピオイドの濫用により2017年1年間に170万人が精神障害を引き起こし,うち4万7,000人が死亡」と報じた。同年のオピオイド濫用者は1,140万人ともいわれ,その前年に死亡した人気歌手プリンスさんの死因も,合成オピオイドの一種フェンタニルの過剰摂取だったといわれている。

オピオイド使用が社会問題化した要因として,服用は違法ではないため,医師が患者に対し安易に処方する傾向がある点や,メーカーの過度な販売促進,また,依存症による需要が市場拡大につながったことなどが挙げられる。

濫用者の8割は低学歴,低賃金の非ヒスパニック系白人ともいわれ,20〜30代の若年層に死者が多いのも特徴である。不況や貧困,競争社会に起因するストレスなどが,その背景にあるとの見方もある。

史上“最暑”

米海洋大気局(NOAA)は,世界の陸地と海洋における2019年7月の平均気温が,20世紀の平均15.78℃を約1℃上回る16.73℃だったとして,1880年の観測開始以降,最高を記録したと発表した。気候学上,年間で最も気温が高いのは7月とされるが,NOAAの記録では観測史上,上位10年の9年が2005年以降,上位5年は全て15〜19年という。

同月にはパリで42.6℃を記録するなど欧州が熱波に襲われ,アジアでは香港の平均最低気温が27.7℃と,各地で記録を更新。NOAAの観測記録に基づく米雪氷データセンターの分析によると,7月の北極圏の海面上にある氷の面積は,1981〜2010年の平均を19.8%下回る観測史上最小,また,南極圏海面上の氷も同平均を4.3%下回った。

こうした猛暑の影響で,西欧最高峰のモンブラン(標高4,810m)では,氷河が崩落する恐れが高まっており,麓のイタリア北西部ヴァッレ・ダオスタ州クールマイユール村が9月末に非常警報を発令。夜間の道路や立入禁止区域を設けるなどの対策を講じた。同村広報担当者によると,1日当たり35〜60cmのペースで融解が進んでおり,全体積の5〜6分の1に相当する約25万tの氷塊が崩落する危険性があるといわれている。