月刊警察 2019年 12月号 MONTHLY KEYWORDS
月刊警察

逃亡犯条例

香港以外の国・地域で犯罪に関わり,香港内に逃げ込んでいる容疑者を,協定を結んだ相手国(米英韓など20カ国)の要請に応じて引き渡すことができるよう定めた条例。

立案のきっかけは2018年2月,香港人の男が旅行先の台湾で交際中の女性を殺害,香港へ逃げ帰り台湾当局の訴追を免れた事件。香港政府は2019年2月,男の身柄を台湾に引き渡すため,逃亡犯条例を改正。台湾を国家として認めることを避け,移送先を「台湾を含む中国」と規定した。

これが民主活動家など中国政府にとって不都合な人材の恣意的逮捕や引渡しにつながるとして,香港市民の強い反発を招いた。また,中国政府による香港統治が迫り,高度な自治性が揺るがされるのでは,という懸念も高まり大規模なデモに発展。

半年にわたる度重なるデモで実弾による負傷者も出る中,改正案については10月末,立法会(議会)で正式に撤回が表明され廃案となった。しかし,デモが収まる見通しはなく,英フィナンシャル・タイムズ紙は10月末,林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の更迭を検討中と報じている。

一方で,中国共産党の第19期中央委員会第4回総会では,香港について「一国二制度を堅持し完全なものにする」と認識,法的にデモ取締りを強化する方針を示唆している。

リブラ

米交流サイト最大手フェイスブック(FB)が中心となって発行を目指す決済用の暗号資産(仮想通貨)。23億人以上のFB利用者に普及すれば,デジタル時代の「世界通貨」になる可能性を有するが,金融の不安定化や資金洗浄に悪用される恐れがあるなど課題も多く,各国政府は規制方法に慎重を期している。

スイスに本拠地を置く運営主体のリブラ協会は,送金コストを大幅に引き下げ,銀行口座を持てない貧困層などに新たな決済手段を提供するなどの利点を掲げ,100社・団体の参加により2020年上半期にサービスを開始する計画を描いていた。

しかし,先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議ではリブラへの「深刻な懸念」が言及され,ドイツとフランスは2019年9月にリブラ利用を認めない共同声明を発表。また,米議会下院金融サービス委員会のウォーターズ委員長らは,FBに開発の即時停止を求める書簡を送信。

同協会の設立メンバーに名を連ねていた28社・団体のうち,クレジットカード大手のビザが参加を見送り,当初参加を表明していたマスターカード,ペイパルなどの決済業者も相次いで離脱したため,計画は暗礁に乗り上げている。