矯正に特化した刑事法の基本書!
時代の変化に伴う刑事司法分野の変動に対応した、待望の改訂版、ついに発刊!
最近の社会情勢の変化に応じて,刑事司法関係法令の動きはめまぐるしく,大きな改正が繰り返されている。今回の三訂版も少年法の改正に伴うものが主となっている。
公職選挙法の選挙権を有する年齢が18歳以上となり,民法の成年年齢も18歳に改正することとされたことなどから少年法の取扱いをどうするか議論されてきた。法務大臣の諮問機関である法制審議会の答申を踏まえて,少年法等の一部を改正する法律案が国会に上程された。同改正案は令和3年5月に可決され,令和4年4月1日から施行されることとなった。この改正では,少年法の「少年」は20歳未満の者であることを維持しつつも,18歳以上の少年を「特定少年」とし,特例を定めている。これに伴い,特定少年については,ぐ犯を保護処分の対象とせず,家庭裁判所の審判において保護観察に付された特定少年が遵守事項に違反した場合の少年院収容が規定され,第五種の少年院が設定されるなど,少年矯正の今後の運営に大きな影響を与えるものとなっている。
この法制審議会の答申には,少年法の改正とともに自由刑の一本化などの刑法や刑事収容施設法の改正につながる事項,矯正施設の運営の改善等の事項も含まれており,関係法令の改正案の国会上程が予定されている。今後,改正案の国会審議や矯正施設の運営の改善の動向に注意していく必要がある。
再犯防止等の推進に関する法律に基づき策定された再犯防止推進計画により矯正施設における矯正処遇,矯正教育や社会復帰支援に関する再犯防止施策が積極的に実施されてきているが,施策の充実のためには,福祉,医療,地方行政などの幅広い分野との連携が不可欠となっている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,感染防止のための措置をとるなど矯正施設の運営は非常に困難な状況となっているが,適正に収容を確保しつつ,再犯防止に向けた被収容者の矯正処遇や矯正教育の実施,社会復帰に向けた関係機関等との連携が矯正職員の不断の努力により進められている。
本書は,矯正研修所及びその支所における研修教材や自学のための参考書として多くの矯正職員に活用されており,新型コロナウイルス感染症感染拡大下においても日々努力を重ねている矯正職員が業務を遂行するに当たり,関係法令を理解するための一助となっていることを大変嬉しく思うとともに,今後も関係法令の改正部分の改訂のみならず,関係法令の内容の理解がより進むよう本書の内容の検討を重ねていきたい。
令和4年4月
前法務省矯正局長 大橋 哲