
年間約50回、約7,000名への指導実績に基づくノウハウを凝縮!
「依頼先が分からなくて…」
ある中学校の教員が、ぽつりと漏らした一言です。サイバー防犯教育の必要性は痛感している。けれども、どこに、どのように依頼すればよいのか分からない。
「教材を作る時間がないんです」
別の小学校の教員は、書類に目を落としたまま漏らしました。インターネットの危険性を子どもたちに教えたい。けれども、日々の業務に追われ、一から教材を作る余裕がない。
「ノウハウが足りません」
サイバー防犯ボランティア団体の大学生は、苦笑いを浮かべて打ち明けてくれました。子どもたちを守りたいという思いはある。けれども、授業をどう進めればよいのか、先輩が卒業してしまって分からない。
これらはいずれも、筆者が各地の教育現場やボランティア活動の場で繰り返し耳にしてきた声です。
子どもたちは日常的にインターネットに接続し、SNSを通じて多くの人とつながっています。GIGAスクール構想による一人一台端末の整備も相まって、デジタル空間は今や生活基盤の一部となりました。
その利便性の裏で、子どもたちが直面するリスクは拡大し続けています。
警察庁の統計によれば、令和7年にSNSに起因する事犯の被害に遭った児童は1,566人にのぼり、5年連続で減少を続けていた傾向が反転して増加に転じました。とりわけ小学生の被害は167人と、過去10年で最多を記録しています。さらに、不同意性交や略取誘拐等の重要犯罪の被害児童は598人に達し、前年から約3割増加しています。被害は量・質の両面で深刻化が加速しているのです。
一方で、サイバー防犯教育の現場には、この状況を変えたいという思いが確かにあります。筆者が大学生を対象に実施した調査では、約7割がサイバー防犯ボランティアへの参加に前向きな姿勢を示しました。学校教育においてもサイバー防犯教育への関心は高く、警察側からも、ボランティアと連携した教育活動を広げていきたいという声が聞かれます。
意欲はある。関心もある。それでも、現場はなかなか動き出せずにいます。その一歩を踏み出す壁となっているのは、「やる気」の不足ではなく、「やり方」が分からないことなのです。
本書は、その「やり方」を具体的な形にまとめた一冊です。サイバー防犯教育の現場の今を知るところから始め、準備、授業、教材制作へと順を追って示すことを目指しました。「やりたい」を「できる」に変える道筋を、初めて教壇に立つ大学生ボランティアにも、外部講師との連携を考える教員にも、サイバー防犯教室を担当する警察官や教育行政の担当者にも届けたい。その思いから本書を執筆しました。
同時に、こうした「やり方」を示すだけでなく、ネットリテラシーを体系的に学ぶための教材としても活用できる構成にしました。後半の教材編では、長時間利用とスマホ依存、グルーミング、個人情報と発信のリスク、SNSトラブル(いじめや誹謗中傷)、フィッシング詐欺、偽・誤情報、闇バイト対策、生成AIの仕組みと付き合い方、著作権と作品への向き合い方という、インターネットを使う以上は誰もが向き合うことになる主要なテーマを、一つひとつ取り上げて解説しています。サイバー空間における犯罪やトラブルから自身や家族を守るための知識を、まとまった形で身に付けることのできる構成です。
サイバー防犯について教える立場の方はもちろん、サイバー空間で身を守る術を体系的に学びたい全ての方にとっても、本書がその一助となれば幸いです。
2026年6月
石川 光泰



