既に三重県をはじめとして幾つかの府県レベルの自治体では防災戦略とアクションプランを展開しており、ほとんどのケースは30年計画、すなわち、解析資料がもっとも整っている南海地震が一番起こる確率が大きくなる時期までに防災・減災対策を整備することになっています。しかし、それだけでは不十分です。なぜなら自治体連携ができないからです。阪神・淡路大震災から15年を経過しようとしていますが、この間我が国で発生した大小92回の被害地震では、ことごとく自治体連携が不十分なのです。関係者は謙虚に、この事実を認めなければいけません。なぜ、連携ができないかといえば、日ごろからやっていないからです。ですから、人と防災未来センターでは、被災のおそれのある府県レベルと政令市レベルの自治体を中心に関係者の参加を得て、ワークショップをはじめ、様々な取り組みを行ってまいりました。その成果の一部が本書で報告されています。
しかし、このような大きな問題が数年で解決できるわけではありません。次の東海・東南海・南海地震が起こるまで解決できないかもしれません。しかし、明確な方向性をもって関係者が努力しているときは勢いがあります。そのような状態で突然発生するこれらの地震災害に対処したいのです。人と防災未来センターでは、東海・東南海・南海地震を中核プロジェクトと位置付けて、現在に至るまで組織的な研究を継続しています。本書が、これらの地震災害のみならずほかの災害でも、自治体連携による被害軽減に役立つと信じています。
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長 河田 惠昭