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警察官のための憲法講義
【改訂版】

編著/監修
田村 正博(元警察大学校長) 著
体裁
A5判  408ページ
定価
2,530 円(消費税込み)
本体価格+税
2,300 円+税
ISBN
ISBN978-4-8090-1434-5
C3032 \2300E
発行日
令和3年8月1日
改訂版発行
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本書の特長

令和に生きる全ての警察官へ――

大好評「実際の仕事に役立つ憲法解説書」の改訂版!

  • 最新の判例を追加
     平成20年代以降の判例を数多く掲載し、それらをもとに警察官にとって必要な憲法について解説しています。今日の憲法感覚に基づき、その根底にある憲法の考え方、捉え方について紹介します。
  • 実務との関連性を強化
     実務との関連性がより明らかになっています。逮捕事実の公表と「忘れられる権利」の関係、GPSを用いた捜査など,近年重要視されているプライバシーの問題点との関連性についても解説されています。
  • より分かりやすい表現
     難解な表現,漢字等が分かりやすいものへと改訂されており、スムーズな理解をサポートします。

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はじめに

本書は,「警察官の実際の仕事に役立つ憲法を明らかにする」という観点から作られた初めての「警察官のための憲法解説書」である。警察官が憲法を学ぶ目的は,〃法の定める基本的人権を不当に侵害しないようにする,警察に関する様々な制度や法令を憲法と関係付けてより深く理解する,「憲法」「人権」を理由にした警察に対する不当な批判に自信をもって反論できるようにする,ことにある。このため,本書では,刑事手続上の人権,表現の自由,みだりに容ぼう等を撮影されない自由など,警察官の権限行使に関係のある人権について,保障と限界(権力的介入が可能とされる程度と理由)を解説するとともに,警察関係の法制度と国民主権の原理等との関わりを明らかにすることに努めた。

本書では,専ら最高裁判所の判例と法令とを基にして解説を行った。最高裁判所は,憲法解釈についての最終的な判断機関である。また,最高裁判所によって違憲とされていない法令は,すべて憲法に適合したものといえる。本書は,これらの有権的な憲法解釈のみを記述し,既存の「憲法教科書」にあるような研究者の見解には一切触れていない。法の執行者である警察官にとって求められるのは,「判例等で明らかにされた現実に有効な憲法解釈を学ぶ」ことであって,「学問として憲法のあるべき解釈を探求する」ことではないからである。学問的に重要と考えられている解釈上の論点で,触れていないものも多い。これに対し,「警察行政法」(一部は「刑事訴訟法」)につながる場面では,憲法の規定にとどまらず,個別の法令に至る解説も行った。特に,条例については,警察官も制定に関わる場面があり得ることから,かなり詳しく記述している。

本書は,二部構成となっている。第1部では,「警察官のための憲法」と題して,警察官にとって意味のある規定だけを取り上げ,前記の目的に対応する憲法知識の解説をしている。これに対し,第2部では,「社会常識としての憲法」と題して,憲法の全条文につき,簡単な逐条的解説をしている。警察官も社会人,主権者の一人として,憲法全体の概略を知っておくことが必要だと考えたからである。

本書が,警察官にとって本当に意味のある憲法解説書となることを,筆者として期待している。

平成22年7月

早稲田大学客員教授(警視監,前福岡県警察本部長)
田村 正博


改訂版まえがき

本書は,日本で初めての「警察官の実際の仕事に役立つ憲法解説書」として十年あまり前に発刊し,幸いにも好評を得ることができた。今回,内容の面でも,表現の面でも,「令和の時代にふさわしい警察官のための憲法解説書」とすることを目指して,改訂を行った。

改訂方針の一つ目は,近年の最高裁判所の判例で示されている考え方,今日の憲法感覚を反映したものとすることである。具体的には,平成20年代以降の判例をできるだけ多く記述することに加えて,その底にある考え方・とらえ方を紹介するようにした。GPS捜査判例とエックス線検査を強制であるとした判例,税関における国際郵便の検査に関する判例を,プライバシーへの期待を重視するという見方に立った一連のものと位置付けている。その一方で,今日の考え方からすれば維持されにくいと思える判例の見解は,そのまま記述することのないようにした。また,京都府の風俗案内所条例をめぐる判例など,警察が制度をつくる場面で役立つ情報も提供するようにしている。

改訂方針の二つ目は,実務との関連性をより多くの場面で明らかにすることである。憲法の考え方に沿って実務が行われるべきこと改は当然であるし,また実務の運用が制度や仕組みに対する評価に影響を与える。特に今日では,データを含めたプライバシーをめぐる問題が重要であり,保管・使用制限を守ることがなぜ必要なのかを明らかにした。そのほか,録音録画の法制化を受けた警察捜査のあり方,「忘れられる権利」と逮捕事実の公表などに関するコラムも追加している。

改訂方針の三つ目は,表現をできるだけ分かりやすいものにすることである。本書を全体にわたって見直し,分かりにくい表現を改め,読みにくい漢字はできるだけ使わないようにした。正確な理解のためにどうしても変えることのできない用語については,読みを記載し,補足的な説明を必要に応じて付けている。

本書が,令和の時代の多くの警察官に読まれることを願っている。

令和3年4月

京都産業大学法学部教授・弁護士(元警察大学校長)
田村 正博


目次

  • 第1部 警察官のための憲法
    • 第1章 序論 警察と憲法
      • 第1節 警察官と憲法
        • 1 警察官が憲法を学ぶ意義
        • 2 憲法の働き方
      • 第2節 国民主権の原理と警察
        • 1 国民主権と権力分立
        • 2 国民主権と公務員・行政組織
        • 3 国民主権と法
      • 第3節 基本的人権の保障と警察
        • 1 職務執行における相手方の人権の尊重
        • 2 警察の職権行使による個人の保護
    • 第2章 基本的人権総説
      • 第1節 基本的人権の意味
        • 1 基本的人権の考え方
        • 2 基本的人権の種別
      • 第2節 基本的人権の保障(人権の実現と制約)
        • 1 人権の実現方策
        • 2 公共の福祉による人権の制約
      • 第3節 基本的人権が限定・制約される立場にある者
        • 1 外国人の人権
        • 2 公務員の場合の制限
        • 3 刑事施設被収容者等の人権
    • 第3章 刑事手続上の人権
      • 第1節 人身の自由と刑罰
        • 1 人身の自由
        • 2 国家刑罰権の行使と人権保障
      • 第2節 適正手続の保障
        • 1 適正手続の保障の意味
        • 2 行政手続における憲法31条の適用
      • 第3節 不法な逮捕からの自由
        • 1 逮捕における令状主義
        • 2 被逮捕者の権利(不法な抑留・拘禁からの自由)
      • 第4節 住居等の不可侵(不法な侵入・捜索・押収からの自由)
        • 1 捜索における令状主義
        • 2 行政手続における適用
      • 第5節 黙秘権と自白法則
        • 1 黙秘権の保障(自己負罪拒否特権)
        • 2 拷問禁止と自白法則
      • 第6節 その他の刑事手続上の権利
        • 1 刑事被告人の権利
        • 2 刑罰に関するその他の規定
        • 3 刑事補償請求権
    • 第4章 個人の尊厳と法の下の平等
      • 第1節 個人の尊重と私的自由
        • 1 憲法13条による保障
        • 2 容ぼう等を撮影されない自由
        • 3 個人情報保護とプライバシー
        • 4 憲法13条に基づくその他の人権
      • 第2節 法の下の平等
        • 1 法の下の平等の考え方
        • 2 差別禁止と合理的な差異
    • 第5章 自由権
      • 第1節 自由権保障の全体像
        • 1 憲法の自由権規定
        • 2 自由権規定の歴史的経緯
        • 3 自由の保護
      • 第2節 表現の自由
        • 1 表現の自由の意義
        • 2 表現内容に関する規制
        • 3 表現行為の形態(表現手段)に関する規制
        • 4 報道の自由
        • 5 検閲の禁止
        • 6 その他の情報発信と受取りに関する自由
      • 第3節 集会結社の自由
        • 1 集会の自由
        • 2 集団行動と公安条例・道路交通法による規制
        • 3 結社の自由
      • 第4節 その他の精神的自由
        • 1 通信の秘密
        • 2 思想・良心の自由
        • 3 信教の自由
        • 4 学問の自由
      • 第5節 経済的自由と居住等に関する自由
        • 1 経済的自由
        • 2 居住・移転の自由
        • 3 国を離れる自由(外国移住及び国籍離脱の自由)
    • 第6章 その他の人権
      • 第1節 受益権
        • 1 受益権の意義
        • 2 裁判を受ける権利
        • 3 国家賠償請求権
        • 4 請願権
      • 第2節 参政権と社会権
        • 1 参政権
        • 2 社会権
    • 第7章 統治機構
      • 第1節 国会と内閣
        • 1 三権分立と国会
        • 2 国会の構成と権能
        • 3 内閣とその下の行政機関
        • 4 独立行政委員会
      • 第2節 裁判所
        • 1 司法権の裁判所への帰属と裁判官の独立
        • 2 裁判所の組織
        • 3 裁判の実施と違憲審査
      • 第3節 地方自治
        • 1 地方自治の保障とその意義
        • 2 地方公共団体の組織と住民による統制
        • 3 地方公共団体の権能
        • 4 条例制定権
      • 第4節 予算制度
        • 1 国の予算制度
        • 2 地方公共団体の予算制度
    • 第8章 国法の体系
      • 第1節 憲法
        • 1 憲法と国法の体系
        • 2 公務員の従うべき憲法解釈
      • 第2節 法律
        • 1 法律制定手続
        • 2 法律事項と様々な法律
        • 3 法律の解釈運用
        • 4 憲法が特に認めた法規
      • 第3節 行政機関の命令
        • 1 命令と法律の関係
        • 2 政令及び府省令
        • 3 国家公安委員会規則
      • 第4節 条例
        • 1 条例の制定手続
        • 2 法律と条例の関係
        • 3 条例で定める事項
        • 4 条例の立案と運用
        • 5 規則
  • 第2部 社会常識としての憲法
    • 序 章 日本国憲法の全体像
    • 第1章 天皇
    • 第2章 戦争の放棄
    • 第3章 国民の権利及び義務
    • 第4章 国会
    • 第5章 内閣
    • 第6章 司法
    • 第7章 財政
    • 第8章 地方自治
    • 第9章 改正
    • 第10章 最高法規
  • 巻末付録
    • 日本国憲法 前文
    • 文献案内
    • 判例索引
    • 事項索引

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