15年前、低所から外傷患者を担架に乗せて吊り上げる際、頭部側が足部側より高くなっているのを見て「水平であるべきだ」と感じたのが全ての始まりです。当時は、それらの救助操法が全国的に基本であり、正しいものでした。基本であり、正しいとされているものを変更するには、経験からなる裏付け、医学的根拠からなる裏付け、そして、それらを基にした研究と誰が読んでも研究内容を理解することができる論文的資料が必要でした。そこで数人の仲間で2年ほど研究を重ね、論文にまとめました。その結果、全国から理解と賛同の声が寄せられました。その時の感動経験により、「感動を次の行動のエネルギーにする」全国救護活動研究会の「感動サイクル」が産声を上げました。そして、この「感動サイクル」は救護に関わる様々な分野の方々に広がっていき、1,000人以上の仲間を持つ研究グループとなりました。
過去を否定するのではなく、進化させる研究
他の意見を拒否するのではなく、融合させる研究
否定的な意見をぶつけてくる人は研究に協力してくれる仲間である……ありがとうとお礼を言って話を聞こう。
このようなスーパーポジティブ発想で様々な研究を重ねています。その研究の一つが「震災時に発生する狭隘空間における救助・救急・医療活動〜CSRM〜」です。
このCSRMベーシックガイドは『月刊消防』に研究会で連載していた「KENGO君のCSRM修行」をベースにまとめ、必要な部分は内容を充実させて単行本化しました。研究会では、単行本化するにあたり、「KPT(KENGO Project Team)」を立ち上げ、約30名で1年間編集に奔走しました。研究に2年、連載に2年、単行本化に1年、この編集の間にはたくさんのドラマがありました (興味のある方はいつか研究会でお会いしましょう。)。少人数では決してなし得ないことを達成できたことにとても感謝しています。
一緒に研究を重ねてくれた全国の救護活動関係者の皆さん、各方面の様々な研究会の皆さん、本当にありがとうございました。そして、私たちの研究の基礎となる消防の知識、技術を長年にわたり磨き続けてきた先輩方に心から感謝しています。
この本を手にとっていただいた皆さまにお願いです。本に記載されている内容は、可能な限り検証を行い、誤りがないように仕上げましたが、時代の変化や技術の進歩など、様々な理由で改善の必要に気付くことと思います。私たち研究会は、いつでもご指摘・ご批判をお待ちしています。よろしくお願いします。
最後に、仲間の熱意と研究に協力していただいた専門家の皆さまの愛情が日本全国の救護活動に関わる皆さまに伝わり、救命率が向上することを心から祈っています。
平成25年3月
全国救護活動研究会 代表 八櫛 徳二郎