火災による被害は近年の高齢化社会の進行、社会生活の多様化、外国人旅行者の増加などにより、高齢者住宅、病院、ホテル及び大規模店舗等の不特定多数の者が出入りする対象物の火災が増加するとともに火災による犠牲者も後を絶ちません。
この火災を予防するには火災の恐ろしさを具体的に知らせるため、火災の原因ばかりでなく火災の規模、火災による損害の程度等を数値化して広報することも重要であり、それらの尺度を全国的に統一する必要があることから、総務省消防庁では火災報告取扱要領を定めています。
そして、全国の消防本部がこの要領に基づき火災1件ごとに報告しているところですが、火災の実態は1件ごとに違うことと火災報告の項目が多岐にわたり複雑であることから、防災行政研究会が火災報告取扱要領に解説を加え、『火災報告取扱要領ハンドブック』を発行しています。
当調査実務研究会では、火災が発生すると火災の原因及び損害調査を実施し火災報告を作成する担当者のためになればと、自らの経験を基にして火災報告を作成する際に悩んだことや先輩から指導を受けた実務的なことを中心に、団塊の世代の大量退職を迎えた平成26年10月に東京法令出版から初版を発行いたしました。
しかしながら、初版出版後も火災調査の実務担当者からの質疑が後を絶たなかったことから、初版では説明が足りなかったことを加筆するとともに、初版出版後に寄せられた質疑応答を加え、さらに、質疑応答の分類を内容により細分化して分かりやすくしたほか、全ての質疑応答に付した番号を通し番号にして、更なる照会(質問)に対応しやすくしました。
火災調査担当者は火災が発生すると、質問調書、実況見分調書、火災原因判定書等の煩雑な書類を作成しながら火災報告を作成することから、本書の改訂により火災報告作成に対する苦労が少しでも減ることを期待しています。
最後に、本書の初版発行後にも全国の消防職員からの質疑があることを受け、改訂の企画をしていただいた担当者に対し、火災調査担当者を代表して御礼を申し上げます。
平成30年4月
調査実務研究会 |