近年、激甚化する自然災害やテロ災害を含め複雑多様化する消防活動に加え、建築工法も多様化し、従来の消火戦術では対処できない危険要因も増え、活動の困難性が高まっています。
特に「火災」は、刻々と状況が変化する「進行形の災害」であることから、組織的な安全管理体制が必要であるとともに、活動中に隊員が万一、危機的な状況に陥った際に、いかに危機的状況を排除するかを隊員一人ひとりが認識し、有事の際は、組織的に直ちに行動する必要があります。
このような状況を踏まえて、横浜市消防局では火災現場で安全管理を主任務とする特別高度救助部隊が米海軍日本管区司令部消防隊等の協力を得て研究・検証を重ね、平成31年2月に「救難活動マニュアル」を策定しました。
これまで安全管理は、危険要因の予測と事前回避を主眼に組織的な体制も加え確保してきました。一方で、本書の内容は、危機的状況下、隊員自らの危険要因の排除から仲間の隊員の安全な場所への緊急退避、危機回避要領及び組織的な救出要領を明示したものです。
本書は、あくまでも危機的状況を想定した活動指針でありますが、万一の際は、直ちに危機的状況を排除し公務災害の回避を期するところです。
「消防の任務遂行において隊員の安全管理は、必須の条件です。」
結びに、過去の災害による殉職者に対して謹んで哀悼の意を表するとともに、本書の発刊にあたり、火災現場の最前線で任務を遂行する消防職員や消防関係者に活用され、更なる組織的な安全管理体制の強化に繋がることを祈念いたします。
令和元年10月
横浜市消防局 警防部長 林 久人