本書を手に取られる方は、日々勤務で忙しいなか、昇任試験の勉強をしなくてはなりません。短い時間でいかに合格率をあげるかが大事です。
本書のゴールは、「わかる」ではなく、「解ける」です。刑法は、普段実務で見ない罪や概念も出てきますし、学説が多かったり、裁判の意味が難しかったり、各条文の行為が何を意味しているかが一見してわからないことが多い科目です。そんな刑法を短い時間で「わかる」だけでなく、実際の試験のレベルの問題が「解ける」ように本書は作られています。
最初に条文と問題を見て、「難しい! ここの意味わからない! 知らない!」となったのち、[STEP 1]で条文や罪の趣旨をざっくりと理解して、[STEP 2]で細かいところの説明を読んで知識を広げて[Focus]でまとまったポイントを押さえます。ここまでで「?」から始まった無色の単元に、だんだんと鮮明な色がついて形作られていきます。そして、判例を読むと、実際のイメージが頭に浮かび、ポイントとの関係を通して、何が問題で裁判所がどう考えているのかが理解できるようになってきます。
冒頭で難しい問題と条文に触れたことで、知りたい気持ちが生まれ、何がわからないのかをはっきりとさせたうえで、判例より先にポイントと趣旨を押さえているからこそ、ここで判例の意味を理解することができるのです。
そして、本書はここで終わりません。
ここで終わってはただのわかりやすい教科書です。本書はさらに進んで、[◯×問題]で復習をします。[STEP 2]・[ポイント]・[判例]のところで学んだ大事な論点を踏まえて問題を解くことで、「わかる」が「解ける」になります。さらに、解説でもどこが重要か、何が決め手かが書かれていて、これを読むことで、復習になるだけでなく、昇任試験での実践的な力を養っていることになります。
詐欺罪(最近出題も多いです。)みたいな言葉ですが、本書は、「わかる」だけでなく「解ける」ように書かれているのです。
実は、本書は、作成に2 年以上の期間を費やしました。「効率的に」「わかりやすく」「解ける力がつくように」を何度も構成しながら一つひとつの単元を作り上げました。ですから、自信作ですし、必ずあなたの昇任試験対策において有益です。
人間関係でも「せっかくのご縁ですので……」とか言いますよね。本書を手に取ってくださったのもご縁です。せっかくのご縁なので、昇任試験の刑法分野で満点を取れるよう、本書をボロボロになるまで活用してください。あなたのご健闘を祈念します!
令和4年9月
刑法研究会