消防行政の根幹をなす消防法(昭和二十三年七月二十四日法律第百八十六号)は、我が国における防火、安全体制の確立のため、国民の生命、身体及び財産等を保護し、火災等の災害による被害を軽減することを目的として多岐にわたる分野について規定されており、この中には極めて高度で専門技術的な部分も含まれている法律であり、その規定の内容・趣旨についての理解は、一般になかなか容易なことではありません。
本書は、この難解といわれる消防法について、条を逐って関連する政省令の条項号を記載するとともに、特に基本的と思われる用語をとりあげ、平易な説明を試みたものです。また、本書は、もとより制度の運用面についての解説書でも、法律学的な解釈書でもありません。消防法についての初学者にとって重要と思われるそれぞれの用語の意義について説明した「読む字引」として使用できるよう心がけて編纂しております。
巻末には用語索引を添付し、該当する用語及び関連条項号を迅速かつ容易に検索できるよう工夫しました。関係の皆様にはご活用下さるようお願いします。(■四訂一刷から削除しています。)
本書が、全国の消防防災に携わる関係者の皆様の参考書として、また研修教材等として、お役に立つことができれば幸いです。 なお、不備な点については、今後読者の皆様のご叱正を得て改善していきたいと思います。
また、本書において意見にわたる部分は、研究会の私見であることを予めお断りしておきます。
平成四年三月
消防法逐条用語研究会
本書は、平成四年四月に「消防法についての初学者のための読む字引」として初版を刊行しましたところ、幸いにも皆様に多大なご好評をいただき、これまでに九訂を上梓することができました。このように、長年にわたり、全国の消防防災に携わる関係者の皆様にご活用していただいておりますことを、心から感謝申し上げます。
現在、我が国の人口の高齢化の進展とともに、一般住宅にも住宅火災警報器等の設置を義務付けるなど火災による死者の低減化が推進されているところですが、最近では、地震等に対応した消防計画の作成や防災管理者の設置など地震災害等に対応した防災体制を整備するための制度の導入と一定の大規模・高層の建築物への自衛消防組織の設置を義務付けるとともに、自衛消防組織の組織体制や要員の基準、防災管理者の資格要件等に関する所要の規定の整備が行われました。
その後、東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模・高層ビルを中心にビル全体の防火管理を強化する必要性の高まりや、近年、建築物全体の防火管理体制があいまいな雑居ビル等を中心として多数の死者を伴う火災被害が頻発していること、また、検定の未受検、不正受験の消防機器等が市場に流通する事案が発生していること等から、高層建築物等における防火管理体制の拡充を図るとともに、検定に合格していない消防用機器等に係る回収命令の制度を創設する等の措置を講ずることとした消防法の改正を行い、平成二十四年六月二十七日に消防法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第三十八号)が公布されました。
今回は、この法律の改正とこの法律改正に伴う政令等の改正内容を整理し、必要な加筆を行い、ここに十訂として取りまとめました。
本書では、法の条文の中で政令に委ねている規定がある場合には、その政令の概要等についてもできる限り記載するとともに、分かりやすくするため従来に増して作用系統図等を記載しております。また、巻末には、防火対象物の用途別消防用設備等設置基準を添付して、ご愛読者の方々のご理解の一助になるよう配慮しております。
本書が旧版同様、皆様のご活躍に貢献し、我が国の消防防災施策の一層の充実、発展の一助となれば幸いであります。
なお、今後ともご愛読者の皆様のご叱正を得ながら、常に最新の内容とするべく加筆補充を行うとともに、不備な点については更に改善をしていきたいと思います。
平成二十五年十月
消防法逐条用語研究会