本書は平成14年に初版を出してから6年が過ぎました。 この間に様々な大災害、 事故、 事件、 不祥事等が起こりました。 国民のモラルの低下もさることながら、 行政、 政治、 企業等を問わず指導的立場にある人のリーダーとしてのあり方、 リーダーシップの発揮の仕方に多くの問題が指摘されました。 今回の改訂は、 この点を重視し内容の充実を図りました。
改訂の主な点は……
(1) 本書を第一編 「リーダーシップ」、 第二編 「部下指導」 に区分した。
(2) リーダー、 リーダーシップの基本的な考え方、 理論について、 分かりやすく説明した。
なお、「部下指導」については、一部、削除、補正にとどめました。
消防幹部にとって「リーダーシップ」の問題は極めて重要です。消防長、署長等、管理者になって、はじめて「リーダーシップ」の重要性を認識し学ぶようでは遅すぎます。初級幹部の時代から 「リーダーシップ」 のあり方を学び、 理解を深め人間形成に努める必要があります。
今回の改訂では、 東京法令出版(株)企画開発部、笠松則男さんをはじめ関係者の方々に、多大なるアドバイスやご支援をいただきました。この場をお借りして心から深甚なるお礼と感謝を申し上げます。
平成20年 初秋
筆者しるす
消防の仕事は、 組織目的を達成するために、 典型的な軍隊組織 (階級制度) を取り入れており、 他の一般行政には見られない多くの特質があります。
とりわけ 「強いリーダーシップ」 を発揮することは、 消防の団体的精神、 協調性、 円滑な人間関係を通じて組織力を高め、 職場の士気高揚を図るうえで極めて重要です。
しかし、 具体的に 「リーダーシップとは何か?」 「自らリーダーシップを高めるには、 どう努力したらよいのか?」 となると、 必ずしも体系的な教育が行われているとは言い難く、 消防の特質を踏まえた具体的で分かりやすいリーダーシップの教本は少ないように思われます。
このため、 消防大学校や消防学校で 「リーダーシップ」 の授業を担当した経験等をもとに、 簡潔で分かりやすい消防のリーダーシップの本を著したいと考えました。
リーダーシップ論の専門家やこの道の有能な先輩諸氏が多数おられるなかで、 あえて本にすることに、 いささか躊躇しないわけではありませんでしたが、 現状を考え、 本書の評価は読者の方々にお任せすることにして、 あえて上梓することにしました。
参考となるリーダーシップに関する経営理論の紹介、 自己啓発の手法、 事例研究等を通じてリーダーとしての在り方、 判断力、 意思決定に少しでも役立つように心掛けました。
本書が初級・中級幹部をはじめ消防団や自衛消防訓練指導、 市民防災教育訓練等の指導にあたる消防職員、 昇任試験を目指す方々に参考になれば幸いです。
本書は、 あくまでも私自身の考えや判断に基づいてまとめた関係で、 記述の内容や考え方に異論もあろうかと思われます。 この点、 忌憚のないご批判、 ご叱正を賜れば、 これに過ぐる喜びはありません。
終わりに本書の出版に際し、 貴重なアドバイスをいただいた東京法令出版の笠松則男さん、 関係者の皆さまに心からお礼と感謝を申し上げます。
平成14年 盛夏
高見 尚武