文書鑑定を知るための第一歩!
鑑定者も現場の捜査員も知っておきたいポイントが満載!
文書鑑定では血液型のABO式や指紋における万人不同、終生不変、元素分析の特性X線などのように検体に固有で、世界的に共通した識別を可能とするような特徴的なものがないことから、本書で述べたように、資料の母体となるものの収集やその分析データなどの基礎資料を築かねばならないが、この種の基礎データを用いた鑑定について判例は、自然科学的鑑定に準拠すると評価している。
例えば「私は見たことがないから希少性がある」などのような個人の主観的判断に対して、法文書での判断は基礎データに基づく客観的なものであるとし、その合理性を判決で認めている。
しかし、社会一般においては、法文書における合理性のある鑑定についても、その判断は個人の主観的な判断として捉えられている面があって、公判においても、警察サイドの鑑定をそのような目で捉えた相手側の反論はしばしば経験するところである。 … 中略 …
文書鑑定は自然科学分野における鑑定と違う面があるが、裁判官が自然科学的鑑定に準拠するものと評価していることから見ても、それに応えられるものでなければならない。捜査段階における水先案内人の場合と、公判を前提とした場合とでは、鑑定書を読む側の人が異なる点は、鑑定人や鑑定受託者が認識しなければならないことである。
このようなことから、本書では判例がいう基礎資料やその分析データがどのようなものかについてその概要を示し、それらの活用に触れてみたが、ここでの内容が、第一線の捜査官や検察官をはじめ、司法、法曹界、あるいは社会一般の多くの方々にご理解いただけることを願ってやまない。
令和6年7月
𠮷田 公一