本年は、昭和37年4月1日に警察庁交通局が発足して以来、55周年に当たる年であります。これを記念して、『交通警察のあゆみ』が発刊されることとなりました。
この55年間に、我が国の社会は著しい変貌を遂げています。特に、道路網の整備とモータリゼーションの急激な進展は、物流の拡大、効率化を通じて我が国の経済の飛躍的発展に寄与してきたところです。その結果、国民生活における利便は大きく向上してきましたが、その反面、交通事故の多発や交通公害の発生といった、様々な負の側面が次々と立ち現れてきました。
これに対して、交通警察は、昭和40年代以降、道路交通法令の改正を伴う交通ルールの改善や運転免許制度の改革を行うとともに、交通安全施設の整備や国民の交通安全意識の高揚を図ることなどにより、これらの問題に取り組んできました。また、平成28年に策定した第10次交通安全基本計画において、「平成32年までに24時間死者数を2,500人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する。」という政府目標の達成に向け、交通安全対策、交通指導取締り、交通事故事件捜査、交通規制、運転者管理等が日々着実に推進されています。
また、近年、国内外において、自動運転に関する技術開発が進展しており、交通事故のない社会を実現するためには、交通安全の確保に資する先端技術の普及活用を促進していくことなどの更なる交通事故対策を講じる必要があります。
本書は、この55年間に、警察が国民の協力の下に交通事故の発生を防ぎ、安全で快適な交通社会を実現するために展開してきた様々な交通警察行政のうち、主な施策をとりまとめたものです。交通警察が取り組まなければならない問題はなお山積しておりますが、交通警察が過去の難局に対処し、これを切り開いてきた道をたどることは、新たな視点と感覚を養い、これから更に複雑多様化するであろう交通警察事象に的確に対処していく上で、必要不可欠なことです。
今後の交通警察行政を展開する上で、本書が一助となることができれば幸いです。
平成29年12月
道路交通研究会