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日本遺産は、文化財そのものの価値ではなく、文化財を通して見えてくる歴史や風土に根ざした物語性を重視している。そのため、日本遺産として認定されるには、次の三点を踏まえた“ストーリー” が必要とされる。
①歴史的経緯や地域の風習に根ざし、世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたものであること。
②ストーリーの中核には、地域の魅力として発信する明確なテーマを設定の上、建造物や遺跡・名勝地、祭りなど、地域に根ざして継承・保存がなされている文化財にまつわるものを据えること。
③単に地域の歴史や文化財の価値を解説するだけのものになっていないこと。また、各地の遺産を面としてパッケージするため、文化庁は日本遺産を二つのタイプに分類している。
〈地域型〉 単一の市町村内でストーリーが完結しているタイプ。
〈シリアル型〉 複数の市町村にまたがってストーリーが展開しているタイプ。

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「 日本遺産」認定の可否は、文化庁設置の外部有識者で構成される「日本遺産審査委員会」の審査結果を踏まえ、文化庁が決定する。認定されるストーリーの審査基準は、以下の三点だ。
①ストーリーの内容が、当該地域の際だった歴史的特徴・特色を示すもので、かつ日本の魅力を伝えられること。より具体的には、「興味深さ」「斬新さ」「訴求力」「希少性」「地域性」の高いものが求められる。
②日本遺産という資源を生かした地域づくりの将来像(ビジョン)と、実現に向けた具体的な方策が提示されていること。
③ストーリーを国内外へ戦略的・効果的に発信できるなど、日本遺産を通じての地域活性化を推進できる体制が整えられていること。

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日本遺産の認定申請は、年に1 回、文化庁が都道府県を通じての公募で行われている。2020 年に東京で開催予定のオリンピックとパラリンピックに向け、年間の訪日外国人旅行者数の増加が見込まれている。旅行者が全国を周遊し、地域を活性化させていくためにも、観光客の受け皿となる日本遺産が各地にバランスよく存在することが理想とされる。一方で、日本遺産としてのブランド力を保つには認定件数の限定も必要と考え、文化庁では、東京五輪が開催される2020年までに100件程度の認定を目指している。
申請者は市町村と定められているが、シリアル型のうち、当該市町村が同一都道府県内にある場合は、都道府県が申請者として認められる。ストーリーを構成する文化財群は有形・無形のすべての文化財が対象とされるが、国指定・選定のものを一つ必ず含める決まりがある。
地域型で申請する場合に限り、歴史文化基本構想もしくは歴史的風致維持向上計画を策定済みの市町村、または世界文化遺産一覧表記載案件もしくは世界文化遺産暫定一覧表記載・候補案件の構成資産を有する市町村であることが条件となっている。