法学としての刑事訴訟法は、一つの小宇宙である。
学者は、それぞれの名を冠した教科書を作る。それは、それぞれの主張を軸とし、それぞれの小宇宙を形成する。
しかも、我の建立になるこの小宇宙こそ、本山を戴く正統ぞ、と中外に宣明する。
この書物は、警察学校における「刑事訴訟法」の教授要目と、管区警察学校の初等幹部課一般課程の「刑事手続」(今の「捜査手続」)、同じく中級幹部課一般課程の「刑事法」(今の「捜査手続指揮」)の教養実施要目に副うようにした。
とくに、警察学校で学ぶべき基本事項と、幹部要員として、管区警察学校において学ぶべき事項とを、できるだけ区別し、その後者により多くの分量をさいた。
この書物は、あくまでも、警察実務の道具の一つである。
道具は、使用法をマスターし、くり返して使用する間に人の手足の一部になる。
集中一貫して学ぼうとするときばかりでなく、実務の最中に、ふと感じた疑問を解く伴侶に、この書物がもしなることができたら、著者の幸いこれに過ぎるものはない。