山崎先生の「交通事故解析」待望の改訂版!
現場における実況見分の基礎、タイヤ・自動車の構造や特性などの基礎知識、事故解析に必要な数学・物理を分かりやすく解説。
改訂版では「タイヤの性能」「縦滑り痕」へ新項目・写真を追加しました。
交通事故解析手法について事例を交え詳しく解説しています。
改訂版では「トラックの旋回時の転覆限界速度」「二輪車の制動タイヤ痕からの事故解析事例」「低速ではねられた歩行者事故」などの解析事例を新登載!
交通事故は,自動車の普及とともに増加し,大きな社会問題になった。交通事故がなぜ起きたかを解明する研究も行われてきた。人が運転操作を過って事故が起こることもしばしばで,交通事故が減少しない要因のひとつにヒューマンエラーがある。自動車の走行安全性を高めるために,エレクトロニクスを駆使して自動車を知能化する開発も進められている。
交通事故の解析は,警察官による交通事故の捜査から始まる。第一線の警察官は,交通事故の現場にいち早く到着し,現場保存,実況見分,聞き込みなどの捜査を行い,これらの捜査資料から交通事故の解明が行われる。
交通事故捜査において,被害者・加害者を問わず,交通事故当事者が求めているものは,物的証拠に基づく科学的な事故解明である。交通事故における捜査は,公正に解明されるべきであり,これによって被害者を救済し,加害者の責任を問うものでなければならない。
交通事故の解明の重要なポイントは,実況見分が物的証拠を基礎にして詳細に行われることにあり,事故の解明結果が被害者(遺族の場合もある)及び加害者ともに容認できるものでなければならない。そのためには,現場の鑑識がもっとも重要で,すべての痕跡を採取し,さまざまな証拠から事故解析が行えるのであって,現場鑑識無しでは事故の解析はできない。
本書は,交通事故を科学的に解析するために必要な実況見分の方法について解説した基礎編と,実際の交通事故の事例解析を示した応用編からなっている。基礎編では,タイヤの知識,自動車の基礎,事故現場の見分の基礎,事故解析のための数学及び物理を分かりやすく解説し,応用編では,実際の解析事例として,歩行者事故,自転車事故,二輪車事故,自動車同士の事故の解析手法について解説している。
平成21年7月
山崎 俊一
改訂版を発行するにあたり,以下の項目について新たな解析事例の追加及び図版・写真の更新を行った。
基礎編
4 タイヤの知識
4.4 「タイヤの性能」,4.5 「縦滑り痕」に新項目・写真を追加
5 自動車の基礎
5.2 「ステア特性」,5.3 「限界旋回速度と横滑り摩擦係数」に新項目・写真・図表を追加
応用編
7 自動車の衝突現象
7.2 「自動車の衝突現象」の図を,より正確なものに更新
8 自動車のバリア換算速度,有効衝突速度及び衝突直前速度
8.5 「トラックの旋回時の転覆限界速度」を新登載
8.6 「ポール衝突事故の変形の見分と衝突速度解析」の内容を更新
10 二輪車事故の見分方法と衝突速度解析事例
10.1 「二輪車事故の見分方法のまとめ」,10.3 「自動二輪車の速度解析」に写真・図表を追加
10.5 「二輪車の制動タイヤ痕からの事故解析事例」を新登載
12 歩行者及び自転車事故における衝突地点の推定
12.3 「低速ではねられた歩行者事故」を新登載
12.4 「自転車事故における衝突地点の推定方法」に新項目を追加
13 ひき逃げ事件捜査とタイヤ痕
13.5 「轢過の形態」に記述を追加
引き続き本書を交通事故の解明に役立てていただき,現場の鑑識活動が適切に行われるよう願ってやまない。
令和元年6月
山崎 俊一