火災の覚知〜書類作成まで、火災調査の基礎をこの一冊で網羅。架空の消防署、K市消防局湾岸消防署を舞台に繰り広げられる火災調査員たちの熱き業務に密着。「まんが」で導入部分を示し、「解説部分」で実務のポイントやコツを詳細に解説。まんが部分を読むことで現場のイメージがつかめるため、火災調査の経験がない職員に最適。また、部下指導を行うベテラン職員にも、ご自身の知識の再確認用や指導用としてもお使いいただけます。
消防の業務は、災害現場活動のように関係法令やマニュアルを確認しながら対応することができない活動のほか、火災調査における実況見分のようにやり直しのできない業務を専管業務としており、我々消防職員はそれらの業務についてそれぞれの現場で間違いのない対応をするため、関係法令、過去の事例、対応の原則等について研究するほか、基本訓練、想定訓練等により日々研鑽しているところです。
火災調査業務におきましては、書類の作成、損害額の計算は、「調査書類の書き方」「損害額の算出」等に関する文献を読みながら作成することができますが、実況見分は、「現場の見方」の本を読んでいても、一件ごとに状況の違う火災現場において実況見分の進めかたを間違えたり、先入観を持って実施するとやり直しができないことから、大切な証拠となる客観的事実を見逃すほか証拠品を紛失するなどして、火災の原因究明に大きく影響を与えることになりかねません。
そこで、本書は、団塊世代のベテラン職員が大量退職する背景もあり、火災発生から火災調査書類作成までにおける一連の火災調査について、消防職員として最低限知っていなければならない、組織的に火災調査を実施する基礎的な一例をとりあげています。
そして、特に実況見分を重点にし、火災調査の経験の少ない職員でも気軽に読めて理解しやすくするために、まんがを取り入れ、文章だけでは思い浮かばない現場の光景を示しながら、その場面ごとの注意事項について解説を行い、火災調査技術の伝承に少しでも役立つ内容としています。
また、第6章には、『月刊消防』(東京法令出版)に読者の皆様から寄せられた火災調査に関する質問に対して、当研究会が説明したことを質問の内容ごとに分類して載せましたので、執務の参考にしていただきたいと思います。
火災の調査結果は、事後の火災予防に活かすほか、火災原因の判定結果によっては関係者の人生を大きく変えてしまうこともありますので、本書で火災調査の基礎を確認して、さらに、自らの経験などから火災調査技術を向上させていただくことを望みます。
最後に、全国の消防職員が苦労している火災調査に関する内容を取り上げていただいた本書の企画担当者に、この場を借りて御礼申し上げます。
平成22年6月
調査実務研究会