130頁で関連判例とともに刑事法理論を概観!
現在の刑事法が、どのような考えのもとに成り立っているのか、社会情勢の変遷や判例の考え方の変化を踏まえて解説。
※本書は、平成26年2月発行の『ハンドブック刑事法―罪と罰の現在―』を、最新の内容、より見やすいレイアウトに改めて発行するものです。
特設サイト 「著者からのメッセージ」 に、本書著者 前田 雅英先生が 「はしがき」 には収まりきらなかった想いを寄稿いただいていますので、こちらもご覧ください。
本書は、警察官をはじめとする、日本の刑事司法実務に携わられる方々に、「現在の刑事法」の全体像を理解していただくためのものである。平成26年2月に『ハンドブック刑事法』(東京法令出版)を刊行したが、法改正や判例の変化を踏まえ、大きく書き改めた。全体の構成も変えたので書名を新しくした。ただ、ねらいや基本的な考え方は、変更していない。
「専門家に対する講義案」という意味では、もっと詳しい情報を盛り込んだ方が良いが、「全体」を俯瞰した上で、現実の問題を擬律していただくことがなにより大事だと考え、「筋が分かりやすいこと」「短時間で読み切れるもの」「現在の動きを反映したもの」を重視して執筆した。
個々の知識をいかに増やしても、全体の中でいかなる意味を持つのかを知らなければ、力にはなり得ない。その知識の「実」がどの「枝」になっていて、「根」といかに繋がっているかを知ることが大切である。別の言い方をすれば「流れ」を理解してほしいのである。
古い知識は、無駄であるというより、害悪になることに注意してほしい。学ぶべき「法」も判例も、動いているのである。そして、ここ10年来、学説・理論が急激に重視されなくなり、現実にいかなる問題が起こり、実務がいかに対処しているかを知ることの重要性が強調されるようになった。そのような、実務の対処は、「正しい学説」が先にあって、それに従った結果であるとは、必ずしもいえなくなった。
そもそも、現在の状況を踏まえなければ、法の解釈は不可能である。刑法・刑事訴訟法が改正されたということ以上に、法というものについての「考え方」が動いてきていることを知ってほしい。最近では、裁判員裁判の定着もあり、刑事法の考え方の地盤はじわじわと動いている。その意味でも、判例の重要性が増している。
本書は、一通り刑事法を勉強し、さらには、実務でその運用に携わっておられる方にも「全体像」を俯瞰していただくためには有用だと考えている。
また、大学生や高校生等も含め、より多くの刑事法に関心のある皆様に読んでいただき、警察活動をはじめ、検察、裁判、弁護の活動の意味を知り、日々生起する刑事事件の処理についても、マスコミやそれに登場するいわゆる評論家の意見を鵜呑みにすることなく、自分の頭で判断して、評価できるようにしていただければと、密かに期待している。
2017年9月
前田 雅英