「交通事故で悲しむ人を一人でも減らしたい!」という熱い思いで職務につく京都府警察本部の警察職員がいます。本書は交通業務に携る交通警察職員が、取締りの現場や、事故現場で感じた思い、交通事故、被害者、加害者に対しての思いや経験談を綴った体験記集です。
第一線で働く交通警察官にとっては、同じ職務につく仲間がどういった思いで日々奮闘しているか思いを共有でき、モチベーション・職務倫理を向上させるための一助となる書籍となります。
一般の方にとっては、身近ながらなかなか深く知ることのできない交通警察官の思い。交通取締りをはじめ、交通事故捜査、交通安全教育、交通規制、免許・許認可業務など多岐に渡る交通警察について理解を深めるとともに、交通安全意識を高める啓発書籍となります。
我が国では、昭和三〇年代以降、自動車交通が急成長し、社会経済の発達と国民生活の向上に大きく貢献した一方、交通事故の激増により「交通戦争」と言われた時期を迎え、昭和四五年には全国における交通事故死者数は一六、七六五人と戦後最悪を記録しました。京都においても、昭和四七、四八年には三六〇人もの尊い命が失われ、また、平成二四年には、京都を代表する観光地である祇園における死傷者多数の交通事故や、亀岡市における通学児童や保護者が犠牲となる痛ましい交通事故が発生したことは、記憶に新しいところです。
先人達が、「悲惨な交通事故を一件でも減らそう。」と、交通安全教育や交通指導取締り、交通規制等に取り組んできた結果、平成二八年中の交通事故死者数は全国で三、九〇四人と、統計史上初めて四千人を下回るまでに減少し、京都においても六〇人と、「交通戦争」時の六分の一にまで減少したところです。しかしながら、多くの尊い命が奪われ、沢山の悲しむ人がいる以上、交通警察の責務は、未だ道半ばであります。
交通警察職員は、そんな悲しい思いをする人を一人でも減らすべく、日々奮闘しています。
交通警察業務は、得てして、日の目を見ない仕事かもしれません。交通取締りを始め、交通事故捜査、交通安全教育、交通規制、免許・許認可業務など、多岐にわたり、これらは全て交通事故防止に繋がるものでありますが、その業務が本当に交通事故防止に役立っているのか、どこで誰の交通事故を防ぐことができたのか、というのは、目に見えて感じることができないからです。
それゆえ、「一件でも交通事故を減らしたい。」という熱い気持ちを持って交通警察職員になったにもかかわらず、日々の多忙な業務に追われ、達成感を感じることができないまま、そのモチベーションを維持することができなくなる職員が少なからずいることも確かです。
この体験記集は、そんな職員に、もう一度、交通警察を志した時の熱い気持ちを呼び起こさせることはもとより、交通警察職員以外の方にも手にしていただき、彼らの熱い気持ちに触れることで、交通警察業務への御理解を深めるとともに、交通安全意識を高めていただき、ひいては、交通事故のない社会を実現できればと、発刊に至ったものであります。
本書の企画に御賛同いただきました、京都府警察官友の会、一般財団法人京都府交通安全協会、一般社団法人京都府トラック協会の皆様には、心から御礼申し上げます。
平成三〇年一月
京都府警察本部長 緒方 禎己