本書は,東京法令出版株式会社が以前に発刊していた『シリーズ捜査実務全書』が古くなったため,新たな執筆陣により,現代の犯罪情勢に合わせた実務書を作成しようとの意図で作られたものである。
まず,手始めに,以前は「暴力団犯罪」との表題で発刊されていたものを現代風に「組織犯罪」とし,組織的に敢行される犯罪の捜査等に関連する法律ごとに必要な解説を試みることとした。組織犯罪集団は,平穏な市民生活を暴力的に破壊するだけでなく,経済社会等にも深く静かに侵入し,正常な経済システムそのものの崩壊に及ぶものである。そのような犯罪集団との闘いに従事する捜査官のために,本書が法解釈面,理論面,そして,捜査手法面での武器として役立つものとなることを企図したところである。
そこで,当時,若手の管理職であった東京地検等の副部長クラスに集まってもらい,後述するような分担を決めて執筆に取り掛かっていただいた。ただ,編著者の不手際等もあって時間がかかり,現在では,検察の中枢を担う幹部となった彼ら彼女らの手によって本書が完成したのである。
具体的には,現在,山口地検検事正の石山宏樹氏により,第2編「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反」及び第4編「金融関係事犯」のうちの第3章「不良債権処理―特に競売入札妨害及び強制執行妨害に関して―」の部分を,また,現在,千葉地検次席検事の眞田寿彦氏により,第4編「金融関係事犯」のうちの第4章「犯罪による収益の移転防止に関する法律違反」の部分を,さらに,現在,神戸地検次席検事の山下裕之氏により,第4編「金融関係事犯」のうちの第1章「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律違反―特に預り金に関して―」の部分及び第2章「特殊詐欺」の部分を,そして,現在,大阪地検特捜部長の村中孝一氏により,第7編「その他不正な収益を得るための犯罪」を,それぞれご執筆いただいた。
くわえて,元警察庁生活安全局長の辻義之氏により,同氏が前記現職のころからの専門分野である,第3編「銃砲刀剣類所持等取締法違反」のご執筆をいただいた。
また,現在,大阪地検検事の山口智子氏と編著者によって,第5編「風紀犯罪」のうちの第2章「売春防止法違反」及び第3章「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反」を執筆し,最後に,編著者において,第1編「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反」など残余の部分を執筆した。
以上のような優秀な6名の方々が多忙な職務に追われる傍ら,そのご協力,ご尽力により,本書が陽の目を見るに至ったのである。本書には,彼ら彼女らの叡智が込められており,それゆえ,本書が組織犯罪対策等に従事する捜査官の方々のお役に立てるものとなっていることは疑いを容れないものと思っている次第である。
令和3年5月
編著者 城 祐一郎
城 祐一郎
石山 宏樹
辻 義之
山下 裕之
山下 裕之
石山 宏樹
眞田 寿彦
城 祐一郎
山口 智子・城 祐一郎
山口 智子・城 祐一郎
城 祐一郎
村中 孝一