平成2年に初版を発刊してから早くも三十年が経過しました。この間には、国内外を取り巻く社会経済状況は大きく変化し、国際化が一層推進され、平成7年からは、各分野にわたって規制緩和が大きく推進されました。
危険物関係法令においても、安全性を確保しつつ、科学技術の進展に対応した様々な規制の見直しが行われてきました。その結果、主なものとして、平成10年の有人式セルフ給油所の登場、平成14年には引火点の高いものが危険物から除外されるなどの見直しが実施されました。さらに、危険物施設の構造基準は、従来の仕様規定から性能規定化への動きが進んでおります。
平成7年には阪神・淡路大震災、平成23年には東日本大震災に遭遇し、危険物施設においても地震、津波による施設の倒壊、それに伴う火災等、多数の被害が発生いたしました。これらの地震による教訓として、危険物施設の耐震基準の見直しも行われました。
また、危険物施設の老朽化・取り扱いの不注意などによる、危険物に関連した大規模な事故が各地において発生しており、これらの事故の背景には、ベテラン従業員の退職に対応した人材育成や技術の伝承の重要性が指摘されています。
本書は、こうした現状を反映しつつ、消防法令の動きを中軸にして、日頃の危険物の保安事務に携わる人たち、危険物関連事業所の管理者・危険物保安監督者や消防関係者に危険物法令の概要についての理解を一層深めていただくことを念頭に作成したものです。
危険物関連業務に関し、本書を幅広くご活用いただければ幸いです。
令和2年8月