最新の重要判例を読んで“刑事法の今”を理解!
刑事法学の大家・前田雅英先生が、最新の重要判例を基に、実務における法解釈の筋道を解説!迷わずに、適法な捜査・公判活動に取り掛かることができます。
特設サイト 「著者からのメッセージ」 に、本書著者 前田 雅英先生が 「はしがき」 には収まりきらなかった想いを寄稿いただいていますので、こちらもご覧ください。
法律学とは、過去の蓄積、そしてそれが「発酵」したところから学ぶところの多い学問かもしれないが、一方で法の理論も変化していく。「法」とは、理論を踏まえながらも、法を必要とする社会の要請に応ずるものでなければならないからである。その意味では、法の変化の最前線を意識することが何より重要だともいえる。そして、「最前線」は、法理論研究の発展や立法の変化にも存在するが、法の変化は、圧倒的に判例を通して認識されることが多い。
平成が終わり、令和を迎えた。伝統的な法学部では、創立130年を超えるところがいくつかある。日本の現在の大学の源流が、「進んだ西欧法の最新の議論を紹介し、学ぶ法学部」にあるといっても、あながち誇張ではない。そして、法律学は明治、大正、昭和、平成の時代を経て現在に至る。その中で、「外国を手本に正しい法理論を探求する」という流れがあった。法解釈学は、あくまでも日本社会を制御するための「道具」であり、外国法は、そのための参考にすぎない。昭和の時代からの認識は、徐々に強まってきてはいたが、平成の法の加速度的変化は、法律学の有り様にも大きなインパクトを与えた。裁判員裁判制度の導入、法科大学院の存在などにより、その方向への傾斜が強まった。
これまでの年号は、中国の古典から借りてきたものであったが、令和は、国書から引用されたのである。法律学の変化を象徴しているとまではいえないが、法律学に生じていた変化を自覚させるものともいえる。
もちろん、「生の法」をそのまま表現したら「理論」ではなくなる面がある。本書は、刑事法の領域で登場してきた判例を分析することにより、「法解釈」の最前線を把握しようとするものである。判例そのものの変化の紹介ではなく、変化の根底にあるものを、明らかにしようと試みたつもりである。
刑法、刑事訴訟法にまたがり、多岐にわたる論点を検討するが、まさにそのことにより、現在の刑事法解釈のフロントラインが明らかになると考えている。
読者として様々な方々を想定しているが、必ずしも専門的知識を前提としてはいない。最近の刑事法解釈の変化、さらにはそれを導く法意識の変化、より根底的には、社会の変化をできるだけ分かりやすく示したつもりであるが、その評価は読者に委ねるしかない。
本書の完成は、東京法令出版の多くの方々の骨身を惜しまないご尽力によるものである。ここに厚く御礼を申し上げる次第である。
前田 雅英