“外国人事件に関わる基礎知識の獲得から捜査方法の習得まで可能となる解説書”
近年,不法入国するなどした来日不良外国人による犯罪発生件数が減少傾向にあるとはいえ,依然として不良外国人による凶悪犯罪は跡を絶たず,その鎮圧は我が国の治安維持にとって大きな課題となっています。
他方,出入国制度の簡素化等によって,出入国者は増加の一途をたどり,人,物の動きの一層の国際化に伴って,日本国内で行われた犯罪の捜査においても外国での捜査が必要となる場面も多くなると思われます。さらに,我が国の犯罪者が他国に国外逃亡し,あるいは逆に外国の犯罪者が我が国に入国する等,犯罪の国際化に伴って捜査手法等刑事手続の国際化も今後ますます加速するものと思われます。
捜査機関に逮捕された外国人被疑者の事件は,一件ごとに犯罪の動機等は千差万別であり,一見似通った事件であっても,被疑者・被害者等の事件関係者一人ひとりの個性,生活環境,出身国の諸情勢,さらには背後関係及び事件の発生した地域の特殊性などによっても異なってきます。
また,「外国人登録法」が廃止され,中長期在留外国人に「在留カード」を交付し,特別永住者に「特別永住者証明書」を交付する新たな制度も施行されています。
本書では,図表・イラストを用いるなど分かりやすい解説に努めることとしました。 外国人犯罪の捜査・取調べにおいては種々の問題点が生起します。そのため,第1編では実務に必要と思われる基本的事項の解説を行い,第2編では事例から実務上発生する問題点とその解決策について記述しました。
本書は,東京法令出版株式会社発行の『捜査研究』に連載した「元検察官のキャンパスノート」に加筆・補正を加え,単行本化したものです。
なお,本書の意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることをお断りしておきます。読者諸賢のご指摘をいただければ幸甚に思います。
末筆ながら,長くご指導いただいているニューウェーブ昇任試験対策委員会の皆様,そして筆者の家族に厚く御礼申し上げます。
令和3年2月
須賀 正行