
覚醒剤事犯捜査のためのロングセラー、増刷に当たり改訂
本書は、平成10年の初版発行以来、「覚醒剤の基礎知識が、図解、写真入りで分かりやすく解説されている」「捜査官、検事、弁護士等からよく出る疑問点が、Q&A形式で網羅されている」「検査法についても詳しく解説され、実務での実践的な留意事項が分かる」と好評をいただいてまいりました。
今回の増刷に当たっては、最近増加している被疑者からの受動喫煙に関する抗弁を追加したほか、「覚せい剤取締法」の表記が「覚醒剤取締法」に改められたこと、覚醒剤原料を指定する政令の改正などに対応して加筆しました。
薬物事犯は、新しい薬物が次々と登場して多様化が進んでおりますが、依然として覚醒剤事犯が薬物犯罪の主流を占めています。また、捜査手続の適法性が争われた事案についても、薬物事犯の占める割合が依然として高い状況にあります。昔からある薬物事犯と侮らず、これを機会に、本書を後輩への教養のために活用してはいかがでしょうか。
令和6年7月、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約の付表Ⅰに9物質が追加されたことを受けて、覚醒剤原料を指定する政令の一部が改正され、新たに9物質が覚醒剤原料として指定されました。
この政令改正を受けてQ8を加筆訂正し、改訂二版を出版することとなりました。
本書を最初に出版して四半世紀余、改訂版を出版してからも早15年以上が過ぎ、長きにわたってご利用いただいたことに、感謝申し上げます。
この間、乱用薬物の状況も大きく変化し、若者の間での大麻の使用が大きな問題になってきており、圧倒的に多かった覚醒剤事犯も最近は減少、検挙者の人数は覚醒剤と大麻がほぼ半々になってきています。また、合成大麻や合成麻薬、コカイン、フェンタニル等、乱用される薬物の多様化も見られます。
しかし、残念ながら、覚醒剤事犯が薬物事犯の中で、大きな問題の一つであることに変わりはありません。
本書が覚醒剤事犯捜査に活用され、その一助になれば、うれしい限りです。
令和7年8月
井上 堯子
覚せい剤の乱用は一向に鎮静化が見られず、 最近は、 むしろ、 中高生へも拡大し、 第三次覚せい剤乱用期に突入したといわれています。 覚せい剤事犯の立証に際し、 容疑物件が覚せい剤であることを明らかにし、 また、 容疑者が覚せい剤を摂取していたことを明らかにすることは不可欠であり、 鑑定・検査が大きな役割を果たしております。 しかし、 捜査や司法に携わる方々にとって、 鑑定・検査に関連した化学的な側面や、 容疑者が申し立てる様々な事柄の正否を判断する基になる科学的な理論や事実については、 なかなかなじみが薄いようであり、 著者等は、 これまで、 様々の質問や問い合わせを受けてまいりました。
本書は、 著者等がこれまで覚せい剤鑑定に関連して、 警察大学校、 司法研修所等での講義の際に受けた質問や、 捜査官、 検事、 弁護士の方々から受けた問い合わせ等を基に、 覚せい剤鑑定に関する問題をQ&A形式にまとめたものであります。 捜査官の疑問にお答えでき、 覚せい剤事犯捜査に少しでも役立てれば、 この上ない喜びであります。
本書の出版に当たり、 いろいろと御助言、 御指導を賜りました前科学警察研究所副所長瀬田季茂博士に深く感謝申し上げます。 また、 出版に御尽力頂きました令文社の北原建彦氏にお礼申し上げます。
平成10年9月
井上 堯子



