覚醒剤事犯捜査のためのロングセラー、
増刷に当たり補訂
本書は、平成10年の初版発行以来、「覚醒剤の基礎知識が、図解、写真入りで分かりやすく解説されている」「捜査官、検事、弁護士等からよく出る疑問点が、Q&A形式で網羅されている」「検査法についても詳しく解説され、実務での実践的な留意事項が分かる」と好評をいただいてまいりました。
今回の増刷に当たっては、最近増加している被疑者からの受動喫煙に関する抗弁を追加したほか、「覚せい剤取締法」の表記が「覚醒剤取締法」に改められたこと、覚醒剤原料を指定する政令の改正などに対応して加筆しました。
薬物事犯は、新しい薬物が次々と登場して多様化が進んでおりますが、依然として覚醒剤事犯が薬物犯罪の主流を占めています。また、捜査手続の適法性が争われた事案についても、薬物事犯の占める割合が依然として高い状況にあります。昔からある薬物事犯と侮らず、これを機会に、本書を後輩への教養のために活用してはいかがでしょうか。
本書を出版してから、 早十年が経ちました。 この間、 乱用される薬物としては、 MDMAをはじめとして新しい薬物が次々と登場して多様化が進み、 その入手方法もインターネットの利用など新しい方法が繁用されるようになってまいりました。 しかし、 依然として覚せい剤事犯が薬物事犯の主流を占め、 残念ながら大きな社会問題の一つであることに変わりはありません。
今回、 本書発行の出版社変更に伴い、 検査法の詳細説明など加筆・訂正を行い、 改訂版として出版することといたしました。 これまで以上に覚せい剤事犯捜査の一助となれることを願っております。
改訂版の出版にご尽力頂きました東京法令出版社長星沢哲也氏ならびに松宇正一氏にお礼申し上げます。
平成20年11月
井上 堯子
この度の増刷に当たって、最近増加している受動喫煙の抗弁に関連して、Q40に補足説明を加えました。また、「覚せい剤取締法」の表記が「覚醒剤取締法」に、文中の「覚せい剤」も「覚醒剤」に改められたことに合わせ、本書の表記も「覚醒剤」に改めました。さらに、覚醒剤原料を指定する政令の改正に合わせてQ8を加筆訂正しました。
これまで以上に本書を広くご活用頂けましたら幸いです。
令和3年10月
井上 堯子
覚せい剤の乱用は一向に鎮静化が見られず、 最近は、 むしろ、 中高生へも拡大し、 第三次覚せい剤乱用期に突入したといわれています。 覚せい剤事犯の立証に際し、 容疑物件が覚せい剤であることを明らかにし、 また、 容疑者が覚せい剤を摂取していたことを明らかにすることは不可欠であり、 鑑定・検査が大きな役割を果たしております。 しかし、 捜査や司法に携わる方々にとって、 鑑定・検査に関連した化学的な側面や、 容疑者が申し立てる様々な事柄の正否を判断する基になる科学的な理論や事実については、 なかなかなじみが薄いようであり、 著者等は、 これまで、 様々の質問や問い合わせを受けてまいりました。
本書は、 著者等がこれまで覚せい剤鑑定に関連して、 警察大学校、 司法研修所等での講義の際に受けた質問や、 捜査官、 検事、 弁護士の方々から受けた問い合わせ等を基に、 覚せい剤鑑定に関する問題をQ&A形式にまとめたものであります。 捜査官の疑問にお答えでき、 覚せい剤事犯捜査に少しでも役立てれば、 この上ない喜びであります。
本書の出版に当たり、 いろいろと御助言、 御指導を賜りました前科学警察研究所副所長瀬田季茂博士に深く感謝申し上げます。 また、 出版に御尽力頂きました令文社の北原建彦氏にお礼申し上げます。
平成10年9月
井上 堯子