
マネロン対策にかかわるなら持っておきたい、基本の一冊
「犯収法」を熟知した法改正担当者による執筆。圧倒的信頼性と正確さに長けた内容
令和4年の改正、令和5年6月施行の下位法令まで織り込んだ最新版
「疑わしい取引の参考事例」など充実した参考資料が二次元コードから手軽に参照可能
難解な犯罪収益移転防止法を分かりやすく読み解くために…
捜査官も、特定事業者も。傍らに置いておけば、実務で役立つこと間違いなし!
犯罪組織の本質は、違法な暴力や威力を背景に、あるいはこれらを用いて営利活動を行い、そこから得た利潤(暴力や威力によって得た不当な「カネ」)を投下してさらに巨額な利潤を生み出すという点にある。したがって、犯罪組織を放置してしまえば、地域や国家の治安を攪乱する大きな要因となるのみならず、自由で公正な経済活動を阻害することとなり、治安・経済両面で国家の沈滞を招くこととなる。
このように、組織犯罪と「カネ」とは分かちがたく結びついているのであるが、暗号資産やステーブルコインなど新たな技術を用いた決済手段の出現、通信手段の多様化・変化、犯罪のグローバル化などは、「カネ」の流れを追うことを困難にさせる要因となる。また、組織犯罪対策における近年の最大課題である特殊詐欺について被害が深刻化しており、その資金ルートを捕捉する必要性はますます高まっている。
マネロン対策は、このような文脈の中で理解すべきものであり、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」、いわゆる犯罪収益移転防止法は、犯罪収益の「カネ」が移転された場合の追跡を容易にし、訴追や剥奪を免れようとする行為(=マネロン行為)を困難にすることにより、マネロン及びテロ資金供与を抑止するものである。平成19年に制定されてから16年が経過し、前述のとおり、マネー・ローンダリングに利用される手段や手口も刻々と変化する中、時代の流れに合わせて累次の改正がなされてきた。
特に、令和4年においては二度にわたって犯罪収益移転防止法の大きな改正が行われた。この規模の法律の大改正が同一年に二度ある例は相当珍しいのではないかと思う。改正担当者は、関係省庁との調整、内閣法制局における法案審査等に当たって相当の苦労をしてこの改正を成し遂げたはずである。
本書は、まさにこの二度の令和4年改正を成し遂げた担当者によって執筆・編集されたものである。犯罪収益移転防止法の制定以来一度も改訂されていなかった逐条解説書の内容を抜本的に見直し、担当職員の手により改正箇所に懇切丁寧な解説を加えたほか、横書き化、過去の主な改正一覧や事項索引など参考となる資料の追加、大部の資料の二次元コード化など、難解な犯罪収益移転防止法を少しでも分かりやすく読み解くための工夫が詰まっている。
本書が、すべての警察職員だけでなく、関係事業者の方々や法律専門家など多くの関係者の皆様に広く利用されることを願い、ここに推薦する次第である。
令和5年6月
内閣官房内閣参事官 髙井 良浩
(元・警察庁犯罪収益移転防止対策室長)
本書は、犯罪による収益の移転防止に関する法律及びその下位法令についての体系的な逐条の解説書である。平成21年6月に初版が発行されて以来一度も改訂されてこなかったが、その間累次の法令改正がなされ、本書についても各方面から改訂の要望をいただいたことから、全訂版を作成する運びとなった。
警察庁犯罪収益移転防止対策室法令担当として犯収法令の改正作業や日々事業者等から寄せられる質疑に回答している職員を総動員し、構想から出版までほぼ2年を要したが、ようやく刊行に至ったものである。途中で異動によるメンバー入替えがあり、私を含め、計9名で執筆作業を行った。
犯収法はただでさえ難解な法律であるので、その逐条解説の執筆も苦労を極めたが、「世界一犯収法を理解している」優秀なメンバーが集まっていたのは非常にラッキーであった。制定以降、平成23年・26年にそれぞれ特定事業者や確認事項を追加する大改正があったほか、令和4年には二度改正がなされた。本書ではその全てを網羅しているが、その解釈を示すに当たっては、国会答弁や法令立案資料における考え方から逸脱しないよう配慮した。
なお、本書の内容は警察庁組織犯罪対策部の公的な解釈を示すものではなく、その責任は全て研究会にあることに留意されたい。
金融機関を始めとする各特定事業者の尽力もあり、疑わしい取引の年間通知件数は昨年、過去最高の58万件超に達し、それらの貴重な情報は多数の事件検挙に役立っている。しかし、未だに特定事業者の提供するサービスがマネロンに悪用される事例は多数ある。また、マネロンに利用される技術に国境はなく日進月歩であり、当局側も当然キャッチアップが求められる。
このように我が国のマネロン対策は道半ばではあるが、一人でも多くの関係者の方々が本書を手に取っていただき、犯収法の理解を深め、結果としてマネロン対策を強化していくことに繋がれば、著者としてこれ以上の喜びはない。
最後に、2年にわたり粘り強くやり取りを重ねてくださった東京法令出版のご担当者の方々、昨年の二度の法改正の中心的存在であり、本書の刊行に当たり丁寧な御指導をいただいた上司、そして本書のベースとなる難解な犯収法の逐条解説本を一から作り上げた初版『逐条解説 犯罪収益移転防止法』の執筆メンバーの皆様に、心より感謝を申し上げたい。
令和5年6月
犯罪収益移転防止制度研究会
本書は、平成19年3月に成立した犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)及び下位法令についての体系的な逐条の解説書である。犯収法の主要部分が平成20年3月1日に施行されてから、警察職員のみならず、金融機関その他各業界の方々から、分かり易い解説はないのかという要望をいただき、また、東京法令出版の植村 大祐氏の強いすすめもあり、コンメンタール形式による解説書を作成する運びとなった。
警察庁組織犯罪対策部において犯収法や下位法令の制定作業に携わった若手職員一同の知見を集約し、その結果を体系化するのに作業を開始してからほぼ一年を要したが、ようやく本書を刊行することができた。作業の中心となったのは、我々2名のほか、作業に協力し、執筆の一部を担当してくれた
近藤 裕行(犯罪収益移転防止管理官付課長補佐)
小野 宏樹(警察大学校刑事教養部教授)
財部 智(犯罪収益移転防止管理官付係長)
井上 健太郎(同右)
砂田 武俊(同右) (順不同)
逐条解説の作成作業は、関係法令の条文の多さや複雑さに加え、他法令の附則等により犯収法関係法令の改正が頻繁になされたことから困難を極めたが、編集方針として、各条文の解釈を提示するに当たっては、国会答弁や、犯収法の前身となる旧金融機関本人確認法や組織的犯罪処罰法第五章の従来からの解釈を踏まえるとともに、法令策定時における基本的な考え方から逸脱することがないように充分に配意した。ただし、いうまでもなく、本書の内容は、警察庁その他いかなる公的機関の見解でもなく、あくまでも最終的な責任は研究会メンバーにあるので、その点についてお断りしたい。
犯収法関係法令は、民商事法の様々な規定を引用しているが、そのほとんどが警察庁以外の各省庁により所管され、その内容も極めて専門性が高い。できる限り所管省庁の職員に問い合わせるなどして正確な記述を心がけたつもりであるが、仮に誤りがあれば遠慮なくご指摘を賜りたい。繰り返しになるが、記述内容の責任はすべて研究会メンバーにある。
本書の編集作業をしている傍ら、平成19年後半から昨年までの間に、我が国のマネー・ローンダリング(マネロン)対策及びテロ資金供与対策の実施状況についてFATF(金融活動作業部会)による第三次対日相互審査が行われ、平成20年10月にはその結果が対日相互審査報告書として公表された。同報告書の中で、我が国はFATF勧告の実施状況が必ずしも十分でない旨様々な指摘を受けており、今後、平成22年秋のフォローアップに向けて政府を挙げてマネロン対策及びテロ資金供与対策の強化を検討していく必要がある。このように、我が国のマネロン対策及びテロ資金供与対策は未だ道半ばであるといえようが、金融機関以外の特定事業者をも広くマネロン規制の対象とすることとされた現在の犯収法関係法令の体系について現時点での整理を行うことは、決して意義のないことではないと考え、今般取りまとめを実施したものである。
犯収法が全面施行されてから、一年が経過し、金融機関等各特定事業者がこれまで以上に不正な資金に対する監視の姿勢を強化するなど、同法の実務運用も定着していると認められる一方、未だに各特定事業者のサービスがマネロン犯罪に悪用されている事件は跡を絶たない。加えて、振り込め詐欺については、近年深刻な社会問題と化しており、官民を挙げた諸対策により一定程度抑止することができたものの、引き続き甚大な被害が発生している。そのような中、少しでも多くの特定事業者の役職員の方々が本書を参考にマネロン対策、犯罪対策を強化し、各事業者の提供するサービスが犯罪組織に悪用されないように必要な措置をとるための一助となれば、編著者としてこの上ない喜びである。
最後に、細かいところまで丁寧に推敲を重ね、時には挫けそうになる編著者を叱咤激励して下さった東京法令出版の植村氏、犯収法の企画立案の中核として活躍され、本書の刊行に当たり、丁寧なご指導をいただいた警察庁長官官房企画官・太刀川 浩一氏、金融関係法令に関して貴重なアドバイスを下さった金融庁総務企画局企画課課長補佐(日本銀行より出向)・森 毅氏に衷心より感謝を申し上げたい。
平成21年3月
| 編著 | 犯罪収益移転防止制度研究会 |
|---|---|
| 代表 |
松林 高樹(警察庁犯罪収益移転防止管理官付課長補佐) 江口 寛章(元・警察庁犯罪収益移転防止管理官付課長補佐) |



