佐久間佳枝 | (司法研修所検察教官) |
畠山光太郎 | (長野公証人合同役場) |
塩澤 健一 | (東京地方検察庁検事) |
磯部 真士 | (磯部法律事務所弁護士) |
佐久間 進 | (静岡地方検察庁沼津支部検事) |
岸 毅 | (東京地方検察庁検事) |
岡本 安弘 | (司法研修所検察教官) |
吉浦 邦彦 | (札幌高等検察庁検事) |
児玉 陽介 | (宮崎地方検察庁次席検事) |
岩村 大助 | (さいたま地方検察庁検事) |
松本貴一朗 | (東京地方検察庁検事) |
横井 朗 | (慶應義塾大学法科大学院教授(出向中)) |
田口 健治 | (東京地方検察庁検事) |
茂木 善樹 | (日本司法支援センター(出向中)) |
河原 克巳 | (法務省法務総合研究所総務企画部付) |
信田 昌男 | (さいたま地方検察庁次席検事) |
鈴木 敏彦 | (霞門法律事務所弁護士、明治学院大学教授) |
吉田 稔 | (東京地方検察庁検事) |
平野 辰男 | (東京地方検察庁検事) |
古賀由紀子 | (さいたま地方検察庁検事) |
渡部 洋子 | (ラオス司法省・最高人民検察院・最高人民裁判所派遣専門家(検事)) |
勝山 浩嗣 | (法務省法務総合研究所教官) |
吉野 太人 | (名古屋高等検察庁検事) |
野村 安秀 | (東京地方検察庁検事) |
椿 剛志 | (東京高等検察庁検事) |
菊川 秀子 | (新富法律事務所弁護士) |
杉本 秀敏 | (横浜地方検察庁横須賀支部長) |
山口 貴亮 | (法務省刑事局付検事) |
吉田 誠治 | (仙台地方検察庁検事) |
奥谷 千織 | (京都地方検察庁検事) |
沖田美恵子 | (株式会社産業革新機構(出向中)) |
名倉 俊一 | (札幌地方検察庁検事) |
清水真一郎 | (名古屋地方検察庁検事) |
捜査官に求められているものは,ひとえに真相の解明である。何らかの犯罪が行われたのではないかとの疑いが生じれば,捜査官は,過去の事実を可能な限り再現すべく必要な捜査を行うこととなる。ただ,必要な捜査といったところで,事件には,それぞれ個性があり,あらゆる事件に適用し得る万能薬のような捜査手法があるわけではない。基本に忠実な捜査が重要であることはいうまでもないが,それとて,複雑困難な事件に当たったときに,今一度そこに立ち返るという意味で一つの道標にはなるものの,一義的に何かを示してくれるものでもない。結局は,そのような事件を担当することになった捜査官が,これまでの経験を活かし,事件の特性・特質を踏まえつつ,イマジネーションを働かせて,当該事件においては,どのような捜査をどのような手順で行えば,どのような証拠が集まり,どのような事実を発見できるのか(真相を解明できるのか)ということを繰り返し自問自答しながら,粘り強く,かつ,無駄をおそれることなく,一歩一歩前に進んでいくしかないように思われる。しかし,そのような時に,一条の光明となるのが,同様のあるいは類似の事件の捜査を担当したことのある先輩,同僚等の創意工夫を重ねた貴重な経験である。実際,私自身,これまで,幾度となく,そのような先達の経験に助けられた。捜査に携わる者にとって,このような先達の経験は宝物であり,これを活かさない手はない。本書のような事例研究書の存在意義もまさにそこにあるのではないかと思う。
さて,本書は,東京法令出版の発行する『捜査研究』に連載された「実例捜査セミナー」の論稿の中から,捜査の第一線にある警察官,検察官等にとって,それぞれがその職責を適正に果たす上で,あるいは現に担当している事件の捜査を進めていく上でも現実に役立つであろうもの,また,捜査手法や捜査技術等の習得あるいはその自己研鑽をはかっていく上で参考になるであろうものを,東京地検検事・范揚恭ほかの協力を得て1冊に取りまとめたものである。このような試みは,まず,昭和63年から平成3年にかけて連載された「実例捜査セミナー」の論稿の中から抜粋して取りまとめた『犯罪捜査の実際』(平成4年4月初版)の刊行に始まり,次に,平成3年から平成4年にかけて連載された論稿の中から抜粋して取りまとめた『続犯罪捜査の実際』(平成8年1月初版)の刊行に続くものであり,本書では,平成4年以降に連載されたものについて,前同様の観点から取りまとめた。
本書で取り上げられた事例は,いずれも執筆者が,その所属する検察庁又は過去に在籍した検察庁において,自ら捜査処理等を担当した具体的事件であり,成功した事例ばかりではなく,失敗事例を含めて,捜査を行っていく上での様々な隘路,事実認定上の問題点,法律上の問題点等にぶつかりながら,いかにしてこれを乗り越えていったのかについて,捜査担当者としての苦労談や反省点も交えつつ執筆されたものであって,現に同種又は類似事件を担当している捜査官にとっては大いに役立つであろうし,そうでないとしても,捜査技術等にみがきをかける上で大いに参考となるものと確信している。
なお,『捜査研究』には,現在も第一線の検事による「実例捜査セミナー」の執筆・連載が続いている。先に述べたように,あらゆる事件に適用し得る万能薬のような捜査手法はない上,社会の急激な変化に伴って,事件はますます複雑化,多様化していることから,第一線の検事が様々な事件を前にして創意工夫した捜査手法もまた事案に応じて多様であり,書き留めておくべき事柄は尽きないであろう。併せて引き続きご愛読願いたい。
最後に,本書の監修出版に当たり,これを快くご了解下さった執筆者各位に厚くお礼を申し上げたい。
平成23年5月
大谷 晃大